研究課題/領域番号 |
18H06468
|
配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
西辻 崇 首都大学東京, システムデザイン研究科, 助教 (70826833)
|
研究期間 (年度) |
2018-08-24 – 2020-03-31
|
キーワード | ホログラフィ / 電子ホログラフィ / 3次元映像 / 圧縮符号化 / 点群 / ベクトル量子化 |
研究実績の概要 |
電子ホログラフィ方式の3次元映像技術において,実用化課題の1つであるデータ圧縮に関する研究課題である.先行研究に多く見られる3次元映像の記録媒体である計算機合成ホログラム(CGH)自体を圧縮伝送する方式に対し,本研究では3次元映像そのものである点群を圧縮し,受信側でCGHに変換する方式をとっている.具体的には,(1)点群自体を高効率に圧縮する符号化方式,(2)符号化された点群データから計算機合成ホログラム(CGH)を高効率に生成する方式,の2点を研究している.この方式では,特に受信側における計算負荷の低減が大きな課題となる.本年度は,まず,奥行方向に連続する点群をベクトル量子化によって符号化圧縮・伝送する方式を開発した.複数の点群を1つの符号語にまとめることで点群情報を圧縮できる.また,圧縮は点群座標情報のソートのみで完結するため,圧縮に伴う計算負荷も小さく抑えられる.次に,符号化点群を復号せずに高効率にCGHを生成するVQ-LUT法を開発した.VQ-LUT法は,事前計算値を用いて計算量を削減するテーブル参照法に基づいており,符号化された複数の点群が作るCGH計算の要素情報(複素振幅分布)を事前計算値としてメモリに保持,利用することで,受信側の計算負荷を削減できる方式である.VQ-LUT法では,一般にテーブル参照法において課題となるメモリ量削減を,奥行方向に連続する点群が作る複素振幅分布が円対称性を持つこと利用して実現したことに特徴がある.約200万画素のCGHを伝送する方式に比較して伝送量の観点で優位となる検証結果が得られている.また,従来のテーブル参照法と比較して,CGH変換に伴う計算負荷を軽減できることも確認できている.以上の成果は,米国光学会(OSA)のOptics Express誌に研究論文として掲載された.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
プロトタイプとなる方式を完成させ,その成果が光学分野における有力誌に掲載されていることは大きな成果である.プロトタイプ完成後は,さらなる圧縮率向上や計算負荷低減を目指した最適化や,ベクトル量子化単位についての検討を進めており,一部において有効とみられる方式が見つかっている.以上の理由から,本研究は順調に進展している.
|
今後の研究の推進方策 |
本年度の検討結果より,点群自体を圧縮する方式の有効性が確かめられたことから,今後は,点群のベクトル量子化方式について改良を進め,特に3次元像に依存しない符号化方式の実現を目標に,有効な方式を探索する.また,本年度は映像フレームごとの圧縮のみを実施したが,フレーム間での類似性を考慮した圧縮方式の検討も進める.これは既存の映像圧縮手法で有効性が認められており,本研究においても有効であることが期待できる.
|