研究課題/領域番号 |
18H06473
|
配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
川口 一画 筑波大学, システム情報系, 助教 (80826975)
|
研究期間 (年度) |
2018-08-24 – 2020-03-31
|
キーワード | スマートアシスタント / 音声インタフェース / 非言語的情報 / コミュニケーションロボット |
研究実績の概要 |
本研究においては、既存の音声のみを用いるスマートスピーカにおいて発生するウェイクアップワードの制約を排除し、利用者が必要とする適切なタイミングでコマンド認識を開始する手法の実現を目的とした。そのための方策として、人間同士のコミュニケーションにおいて用いられる非言語的情報に着目し、それを利用可能なスマートスピーカの開発を行うこととした。
当該年度においては、非言語的情報のうち話者交代等に関わる「注視」に着目し、その入出力を活用可能なシステムの開発を行った。システムには、視線センサを用いて対話者の注視を検出する機能を実装し、利用者がシステムに注視を向けた場合にコマンド認識を開始する機能を実装した。また、ロボットの頭部を用いてシステム側からも注視を提示する機能を実装した。スマートアシスタントとしての応答はAmazon社のAlexa APIを用いて生成した。 その後、実装した注視の入出力を用いるシステムの効果を検証するための評価実験を実施した。実験では、既存システムを想定したウェイクアップワード条件、ユーザーの注視を検出しウェイクワードを代替する注視検出条件、ユーザーの注視検出とシステム側からの注視提示を組み合わせた相互注視条件の比較を行った。実験結果より、相互注視条件においてのみシステムの操作性や印象が優位に向上するとともに、利用者の注視行動が人間同士のインタラクションに近づくことが示された。これらの結果より、スマートスピーカにおいて注視を利用する際にはユーザーの注視を検出するだけでなくシステム側からの注視の提示が重要となることが示された。 上記実験結果について論文の執筆を行い、現在国内の査読付き論文誌へ投稿中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた通り、非言語的情報のうち「注視」の入出力を活用可能なスマートスピーカを開発した。また開発したシステムの効果を検証するための評価実験を実施した。そして実験結果より、スマートスピーカにおいて注視を利用する際にはユーザーの注視を検出するだけでなくシステム側からの注視の提示が重要となることが示された。ここで得られた結果をもとに論文執筆を行った(現在査読中)。以上より、本課題はおおむね順調に進展していると評価する。
一方で、上記の評価実験は単独の利用者を対象としたものであったことから、現在複数人の利用者がいる状況での効果検証を計画している。ただし、予備的な調査の結果から、現状の注視のみを用いるシステムでは課題があることが示された。そのため、今後はその改善のための機能追加とインタラクションデザインの検討を行う。
|
今後の研究の推進方策 |
開発した注視の入出力を活用するスマートスピーカは、利用者が単独である場合には操作性や印象の改善に有効であることが示された。一方で予備的な調査より、利用者が複数人である場合には、いくつかの課題が示されている。具体的には、利用者同士の会話が発生することによりコマンド認識の難易度が向上すること、複数人がシステムを注視する場合にシステム側から状況に応じた適切な注視を提示することが困難となること等が挙げられる。 今後はこれらの課題に対応するための機能拡張として、システムに音源方向特定機能の付与を行う。また、取得した音源方向情報と注視の検出状況を組み合わせて状況に応じて適切な動作を行うためのインタラクションデザインを検討する。 その後実装したシステムの効果を検証するため複数人の利用者が存在する状況を想定した評価実験を実施する。また実験結果を分析し、必要であれば他の非言語的情報を利用する機能を追加する等の機能改善を行っていく。最終的には取り組みの内容を論文としてまとめ、論文誌もしくは国際会議に投稿を行う。
|