研究課題
本研究では、気遣いや心配りを通じた良い感情経験を顧客に提供するサービスとして、「言葉がけ」に着目し、どのような対話ロボットが気遣いや心配りを通じたユーザに良い感情経験を提供するサービスをどの程度行うことができるのか、また人以上のことができるのか、を調査する。言葉がけとは、挨拶、手助けの提案など、能動的に話しかける行為であり、相手の目的・状況・ニーズに合わせて適切に行うことにより、気遣いや心配りを表現でき、良い感情経験をもたらすことができると考えられる。平成30年度は、気遣いや心配りを示すインタラクションの基礎的な調査、およびホテルの共用環境(廊下・エレベーター前)における言葉がけの実践的効果評価を行った。基礎的な調査では、実験室実験により、卓上型人型ロボット(SOTA)における心温まるインタラクションの方法、ユーザの性格との関係、ロボットのデザインとの関係について明らかとなった。本結果は、国際会議IROS(International Conference on Intelligent Robots and Systems)に投稿した。実践的な効果評価では、ホテルサービスにおけるすき間時間(廊下・エレベーター前)に、ロボットが声掛けによる気遣いや心配りを示すインタラクションを行い、ホテル全体のサービスに対する満足度へ貢献を調査した。結果として、ロボットによる声掛けにより、押しつけがましくなく、おもてなしが感じられ、気分を改善し、楽しい空間作りに貢献できることを示した。また、インタラクションの回数を重ねるごとに満足が向上する傾向も見られた。本成果は、国際会議HAI(International Conference on Human-Agent Interaction)で口頭発表し、国際雑誌(Contemporary Hospitality Management)に投稿した。
2: おおむね順調に進展している
本研究の問いである「気遣いや心配りを通じた良い感情経験を顧客に提供するサービスとして、「言葉がけ」に着目し、どのような対話ロボットが気遣いや心配りを通じたユーザに良い感情経験を提供するサービスをどの程度行うことができるのか」について大きな進展が見られるため。残る「人以上のことができるのか」といった問いや、推薦システムへの応用に今後取り組む。
平成30年度の成果として、ロボットの外見(特に、かいわいさ、幼さ)という因子の重要性が示唆されたため、検証実験を行い確認する。本件は、ロボットの人以上のことができる点として、重要な要因である。さらに、共用環境だけでなく、プライベートな空間(例えば、ホテルの客室内)におけるインタラクションの在り方についても、実証実験などを行い、考察する。これらの結果を踏まえ、ロボットによる気遣いや心配りを通じた良い感情経験を顧客に提供するサービスの在り方についてまとめ、論文投稿を行う。最後に、こうした良い感情経験を顧客に提供するインタラクションを応用した推薦システムの評価を行う予定である。
すべて 2019
すべて 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)