体外式心肺補助装置における人工肺のガス交換性能は、ガス相出口付近に発生する結露や血液相から漏れ出す血漿成分などが要因で経時的に劣化し、ある時点で急にデバイス交換が必要になる。しかし臨床使用できるガス交換性能のリアルタイムモニターは存在しないため、操作者個人の経験に頼った維持管理を行っているのが現状である。 本研究の目的は、客観的な評価指標となる人工肺ガス相入口圧自動記録システムを用いた多施設共同前向き観察研究を実施することで、人工肺の結露対策法や人工肺交換時期などのリスクを可視化し、個人差や施設間格差を無くし、安全性の高い維持管理方法をガイドラインとして示すことである。 具体的な成果は、(1)10施設の共同研究者によりグループを構築し、各施設の臨床現場における体外式心肺補助装置の維持管理方法について、アンケート用紙と装置の種類、使用中の写真などを収集し分析を行った(第29回日本臨床工学会で発表)。人工肺の結露対策は、7施設が温風加温装置を使用しており、3施設が酸素ガスフラッシュのみ施行していた。温風加温装置の使い方は、①出口に設置、②ビニルシートで人工肺全体を覆う、③人工肺の一部のみビニルシートで覆うなど多種多様であった。 (2)人工肺におけるガス交換性能の客観的指標として用いる人工肺ガス相入口圧自動記録システムの基礎的性能評価を実施した(第33回日本冠疾患学会で発表)。 (3)学会において客観的評価指標となる人工肺ガス相入口圧自動記録システムを用いた多施設共同前向き観察研究に協力施設を募集し現在20施設まで研究グループを拡大した(第45回日本体外循環技術医学会大会で発表)。 施設によって倫理申請に費用が発生するなど倫理申請の手順および様式が異なり、時間を要したものの各施設の観察研究データが収集できる環境を構築できた。今後、中間報告を実施し、ガイドラインに向けて検討を進める。
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