研究課題/領域番号 |
18H06497
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
後藤 哲智 愛媛大学, 沿岸環境科学研究センター, 特定研究員 (90825689)
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研究期間 (年度) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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キーワード | 網羅分析 / 構造解析 / 有機ハロゲン化合物 / GCxGC-HRToFMS |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、海産の魚介類に蓄積する多様な有機ハロゲン化合物 (人工汚染物質、海洋天然物質、構造・起源未知物質) の総体を把握し、海洋汚染のプロファイルや時空間トレンドを解明することにある。平成30年度は、二次元ガスクロマトグラフ-高分解能飛行時間型質量分析計 (GCxGC-HRToFMS) を用いた測定・解析手法を確立し、定着性二枚貝に蓄積する有機ハロゲン化合物のノンターゲットスクリーニングを試みた。具体的には、ゲル浸透クロマトグラフィー (GPC) とシリカゲルカラムクロマトグラフィーのみで精製・分画した二枚貝の試料抽出液をGCxGC-HRToFMSでフルスキャン分析し、観測された各成分のマススペクトルデータ (精密質量、分子イオンクラスターのハロゲン同位体比、フラグメントパターン) をもとに元素組成や化学構造を推定した。その結果、二枚貝は残留性有機汚染物質 (POPs) に指定されているポリ塩化ビフェニルや特定の有機塩素系農薬類に加え、多数の海洋天然物質 (塩素化メチルビピロール、メトキシポリ臭素化ジフェニルエーテル類、臭素化インドール類)、さらには構造・起源未知のミックスハロゲン化合物に複合曝露されていたことが明らかとなった。また、ガスクロマトグラフ-高分解能二重収束型質量分析計 (GC-HRMS) を用いて、上記物質群の濃度を選択イオンモニタリングモード (SIM) で測定した結果、構造・起源未知のミックスハロゲン化合物は、POPsに匹敵する濃度で二枚貝に蓄積していたことが判明した。興味深いことに、この未知物質は分析に供試した全ての二枚貝試料から比較的高濃度で検出されたことから、その排出源は沿岸域に遍在しているものと推察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度は、試料前処理法と機器測定条件を最適化し、実試料に適用可能なスクリーニング分析手法を確立した。また、各種標準物質の保持時間情報やマススペクトルデータをライブラリー化し、物質同定や異性体判別の精度を高度化するなど、研究計画で予定していた基礎検討項目を完遂した。 二枚貝を生物指標としたモニタリング研究では、確立した新規スクリーニング手法を用いて、未知物質を含む多様な有機ハロゲン化合物の同時検出に成功した。また一部の物質群については定量分析を進め、蓄積濃度や異性体組成に関する基礎データの集積にも着手した。このように、当初の計画通りに研究が進展し、期待していた成果が着実に得られているため、現在までの進捗状況は概ね順調であると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、愛媛大学・生物環境試料バンク (es-BANK) の凍結保存試料を活用して、二枚貝に蓄積する有機ハロゲン化合物の濃度や組成割合の経時的変化を解析し、海域における有機ハロゲン化合物汚染の変遷やその特徴を明らかにする。また昨年度に引き続き、未知物質の構造・起源解析を進め、それらの環境動態や生物蓄積性についても評価する。
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