本研究では、カロリー制限と発がんの両方に深く関係しているオートファジーとアポトーシスの臓器における応答の違いが、カロリー制限による発がん抑制効果の臓器特異性に関わっていると仮定し、マウスの臓器における放射線被ばく後のカロリー制限によるオートファジーとアポトーシスの誘導を比較することで、カロリー制限による発がん抑制効果に臓器特異性が生じる原因を明らかにすることを目的としている。 本研究は、B6C3F1マウスのオスを1週齢時にX線3.8 Gyを照射した照射群と非照射群の2群に分け、その後7週齢から30%カロリー制限を行う制限群と非制限群に分けた4つの実験群を設定している。本年度は、前年度から飼育していたマウスを含め、放射線照射直後から肝がん発症前の時期である57週齢までの8つのタイムポイント(放射線照射後72時間、7、8、10、14、28、42、57週齢)において臓器の採取と組織切片の作成を行った。マウスの体重についてはカロリー制限群と非制限群において有意な差が生じていた。また、57週齢においてはX線3.8 Gyを照射した非制限群でのみ肝がんの発症が複数の個体で確認された。そのため、本研究においてもカロリー制限による発がん抑制効果が示唆された。 また、本年度は作成した組織切片を用いて複数のオートファジー関連タンパク質の傾向免疫染色を行い、4つの実験群間で臓器内におけるタンパク質の分布や発現の比較を行った。さらに各週齢間においても比較を行うことで、オートファジー関連タンパク質の継時的な変化を解析した。また、オートファジー関連タンパク質の発現量をより正確に解析するために、凍結保存した臓器からタンパク質を抽出し、ウエスタンブロットによる解析を行った。
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