研究課題/領域番号 |
18H06499
|
配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
鎌内 宏光 名古屋大学, 環境学研究科, 研究員 (00398942)
|
研究期間 (年度) |
2018-08-24 – 2020-03-31
|
キーワード | 海霧 / イオウ / 安定同位体 |
研究実績の概要 |
本研究課題では、北西太平洋で発生する海霧に含まれる成分から、その起源を明らかにすることを目的とした。ベーリング海やアリューシャン列島沖での従来の研究では、霧水に含まれる塩素量から換算された非海塩性硫酸イオンが多量に含まれていることから、偏西風によって運ばれた東アジア由来の人為汚染物質がこの地域の海霧のpHを低下させていると考えられてきた。しかし発生地からは数1000km以上と遠すぎる上に、当該海域までの偏西風の経路にあたる朝鮮半島や日本では酸性雨や酸性霧が観測されていないことから、従来の解釈には疑問があった。 1990年代以降には、植物プランクトンに由来するジメチルイオウが、大気中での光酸化によって吸湿性の高い硫酸に酸化されて雲核となる過程が注目されてきた。北西太平洋は植物プランクトンによる生物生産が非常に高いことと合わせると、植物プランクトンに由来する硫酸がこの海域の霧水のpHを低下させている可能性が考えられる。 そこで本研究課題では、硫酸イオンに含まれるイオウの安定同位体比が化石燃料と海塩で大きく異なることに着目し、海霧水および海岸付近の陸域に沈着するイオウの安定同位体比を測定することで、その起源を明らかにすることを目的とした。 まず、霧イベントごとにpHが異なるという既往研究を踏まえ、イベントごとに分けて霧水を採取できる自動採取機を開発することとした。 また、沿岸域に沈着しているイオウの起源を明らかにするために、海岸線付近の陸域で生物試料を採集してイオウ安定同位体比を測定する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、霧イベントごとに分けて霧水を採取可能な自動採取機の開発を行った。開発は概ね予定通りに進捗したが、霧捕集機ではこれまで使われたことのない、イオン交換樹脂による成分の保持機能を実装するために時間を要した。結果的に、当初の予定よりは若干遅れている。 また、調査地域の海岸線付近での地衣類などを採集し、イオウ安定同位体比の測定を行なった。測定結果は分析中であり、来年度に取りまとめる。
|
今後の研究の推進方策 |
来年度は、開発をこなっている霧自動採取機を完成させ、これを調査地に設置して霧水の採取を行う予定である。採取した霧水成分のイオウ安定同位体比を測定し、その起源を明らかにするという研究目的を達成可能な見込みである。 イオウ安定同位体比を測定した地衣類などについては、測定結果を取りまとめて何らかの成果として発表する予定である。
|