本研究は、人工知能だけでは実現出来ない、その上位の原理としての自然知能という視点に基づく、自然界の生物や化学進化反応のダイナミクスなどに対する知覚と造形から、新しい社会的価値の創出を目指し、英国ロンドン芸術大学セントラル・セント・マーティンズ校(CSM)などとの連携研究を継続実施した。その連携研究を基軸として、化学反応や自然界に見られるダイナミクスの科学的解釈とその社会的意義について、科学と芸術の両方の視点から議論を行った。また、科学的視点を創作に結びつける科学と芸術の連携教育プログラムを実施し、その創作過程と体験から生まれる新しい視点を如何に科学技術研究にフィードバックするかの検討を行った。 英国ロンドン芸術大学セントラル・セント・マーティンズ校(CSM)との連携研究には、ドイツのアーヘン工科大学などとの協働作業を加え、オンラインミーティングと研究者の受入と派遣などを通じて、自然知能という視点に基づく新しい社会的価値の創出を目指すシステムを実施した。そこでは、今まで広く行われて来たアーティスト・イン・レジデンスから、新たにサイエンティスト・イン・レジデンスを提案実行し、ハイブリッドイノベーション連携研究体制と学問体系のプラットフォームを構築した。 以上より、今までに培った異分野研究者交流を総括し、新しい挑戦的連携研究を展開した。自然界の生物や化学進化反応に学ぶダイナミクスの解析と制御、その実験から、自然界の事象を網羅する新しい解釈を試み、さらに、自然知能から文化芸術的かつ社会的に価値のある造形物を制作する新しい美学のフレームワークを構築し、試作制作を実施した。
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