研究課題/領域番号 |
19K21568
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
東口 豊 九州大学, 人文科学研究院, 准教授 (70346740)
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研究分担者 |
上石 学 聖心女子大学, 現代教養学部, 准教授 (70349166)
川瀬 智之 東京藝術大学, 美術学部, 准教授 (90792119)
江本 紫織 九州大学, 人文科学研究院, 助教 (90827289)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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キーワード | AR / フレーム / Pokemon GO / 神話的想像力 / プロジェクションマッピング / 写真 / Instagram / 写真アプリSNOW |
研究実績の概要 |
本研究課題はARと藝術の比較を通して虚構性を内包した新しい現実性の理論の構築を模索し、その文化的・社会的・藝術学的意義を問うものである。研究計画の初年度は、研究組織のメンバーがそれぞれの研究分担領域での問題点を整理し、議論の基盤の形成を行なった。 まず研究代表者の東口豊は、Pokemon GOやECサイトにおけるARの実用例と藝術鑑賞の比較を行い、両者における現実性と虚構性の差異にフレームの存在が大きな役割を果たし、それによってARにおいてはこれまでに存在しなかった新しい現実経験が生じることを明らかにした。また研究分担者の川瀬智之もミケル・デュフレンヌの「想像的なもの」概念やアンドレ・ブルトンの思想を用いて、Pokemon GOにおける現実世界と虚構世界の相互介入の成立に神話的想像力が働くことを指摘した。研究分担者の上石学は、フランスのル・マン、ブロワ、ブールジュでそれぞれ開催されたプロジェクションマッピングのイベントを調査し、現実の物体と映像の融合によってもたらされるプロジェクションマッピングの表現様式とその効果、観客における現実感の形成のプロセスを分析した。研究分担者の江本紫織は、生の現実とは異なり、写真においては写真像以外の様々な情報などが加わって「再構成された現実」が形作られることを指摘したほか、Instagramに投稿された写真アプリSNOWの作例分析から、ARカメラの観賞における虚構性との距離には「観察型」「参入型」「創造型」の3つの類型が存在することを明らかにした。 これらの成果は、ARの発達と普及が目覚ましい現代社会における様々な経験の新しい側面を照らし出したものであると同時に、今後研究計画を発展的に遂行する上での基本的な土台となるものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画通り、研究代表者の東口と研究分担者の江本がセルビア共和国のベオグラードで開催されたThe 21st International Congress of Aestheticsで口頭発表をし、そこで世界有数の美学やメディア論の研究者と意見交換を行なって、多くの最新の研究知見を得ることが出来た。また、上石はフランスにおけるプロジェクションマッピングの試みについて事例収集が出来たほか、江本もInstagram上でのARカメラの作例について順調に事例研究と分析を行なっている。これらの研究成果は、予定通り2回の研究会において研究組織内で共有しただけでなく、2020年3月31日に開催した第2回研究会ではSkypeを用いたオンライン研究会を試行し、ITの発達に伴って可能になった現前における不在を補う新しい経験を研究メンバーで実証した。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度には、令和元年度に行なった理論的枠組みの試論と事例研究を土台にして、各研究組織メンバーがそれぞれ担当領域における事例調査を更に推し進め、それに基づいて理論の修正作業を行う予定である。しかし、現在全国的に蔓延している新型コロナウイルスの影響で既に多くのARテクノロジーの展示会やアートイベントなどが延期または中止になっており、現在の段階で今後予定している研究調査旅行が可能か否かは極めて不透明である。そこで、各研究組織のメンバーは当初計画していたよりも幅広く関連の文献や図版などの資料収集を行い、実地調査の不足分に充てる予定である。また研究会に関しても、多くの来聴者を募る大規模な研究会の開催は現状では不可能なので、主にオンラインでの研究会の開催に切り替え、そこにゲストスピーカーを招く形を考えたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの流行で令和2年3月に東京で開催を予定していた第2回研究会がオンラインの形態に変更になり、それに伴って当該研究会に参加するための旅費・ゲストスピーカーへの謝金が支出出来なくなったほか、ARテクノロジーの展示会やアートイベントの調査旅行が中止になったため。 令和2年度の使用計画は新型コロナウイルスの鎮静化を待って、調査旅行を遂行するほか、ARと藝術に関する関連図書や資料の収集を幅広く行うことで経費を支出する予定である。
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備考 |
・上石学「ガブリエル・マルセルの思想における「愛の精神」ー「抽象化の精神」の克服と演劇を中心とする共同体の可能性」(大柳貴、小林敬、上石学『交わりの哲学~ガブリエル・マルセルと二十一世紀の私たち』ブイツーソリューション、2019年7月、pp.42-69) ・川瀬智之「ミケル・デュフレンヌの芸術論――宇宙的エロースと距離――」(美学・藝術論研究会第5回研究発表会、2019年7月27日、於東京藝術大学)
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