研究課題/領域番号 |
19K21568
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
東口 豊 九州大学, 人文科学研究院, 准教授 (70346740)
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研究分担者 |
上石 学 聖心女子大学, 現代教養学部, 准教授 (70349166)
川瀬 智之 東京藝術大学, 美術学部, 准教授 (90792119)
江本 紫織 九州大学, 人文科学研究院, 専門研究員 (90827289)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2023-03-31
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キーワード | site-specific art / 「異質なもの」と「見慣れたもの」の融合 / 場所・空間の意味の変質 / Meta |
研究実績の概要 |
本研究課題は、AR(拡張現実)を単なる情報伝達の先端テクノロジーとして捉えるのではなく、人間の根源的な表現要求を支えるある種のシステムと見做し、様々な面から藝術との類似性と差異について比較検討を行なってきた。 まず2021年度の研究実績としては、タブローとして描かれ展示される伝統的な絵画との比較で、フレームの有無に起因する現実と虚構の融合のあり方の違いを考察した2019年度の研究成果とは別に、ARが提示するこれらの融合がもたらす「新しい現実性」に別種の性質はありうるかという問題を再考した。ここではsite -specific artなどとの類似性として、「異質なもの(foreign)」が「見慣れたもの(familiar)」の中に突如現れ、それらが融合して提示されることによって場所や空間の意味が変質するということが指摘され、ARによって我々のものの見方が様々に規定され、または変化するという動的な側面が強調されるに至った。 また、このようなARが提示する「新しい現実性」や場所・空間の動的な変化の問題は、単に技術開発や技術史、または表象の形態としての藝術の学問的アプローチの内部にだけ関わるものではなく、広く現代が抱える様々な問題に波及するものであることが示された。江本が参加したグラスゴー大学と九州大学の国際会議では、社会的孤立やゲームにおける異世界の道徳や政治性など、多岐にわたる問題圏との接続が確認されたが、本研究課題が更なる広がりを持っていることの証左でもあり、ARによる虚構と現実の関係によって構築される「新しい現実性」の問題が、今後現代社会が抱える問題の緒として重要性を増すであろうことが認識されるに至った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2020年2月ごろから全世界に蔓延した新型コロナウイルスによるパンデミックは、2021年度に入っても終息の気配を見せることなく、一昨年度より多くの感染者を数えるに至った。そもそも本研究は、2019年度に理論的仮説を築いた後、続く2年間で研究代表者や各研究分担者が各自の研究テーマや関心に従って、担当する藝術ジャンルに関連するAR関連のイベントやそれが用いられる藝術の調査研究を行い、それらを持ち寄って当初設定した理論的仮説を検証・修正し、より実態に即した議論を完成させることを企図していた。しかしながら、2021年度も最長で4月25日から9月30日まで全国的に緊急事態宣言が発出され、また2022年1月後半から3月にかけても新型コロナウイルス感染症まん延防止等重点措置が取られ、その期間を中心に本務校から出張自粛するように強い要請があった。更にそのような社会情勢の中で本研究に関するイベントや公演等の中止や延期が相次ぎ、フィールドワークや研究のために各地へ調査旅行に赴くことを主体と考えていた本研究計画の遂行に大きな打撃を与える結果になってしまった。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルス感染症の流行は未だ終息の気配を見せず、一昨年・昨年に比べて連日より多くの感染者を出している状況ではあるが、現在出回っている変異株は過去のものより致死率が低いと言われている。そのような状況の中、美術館の展覧会や演劇の公演、ARを含む関連技術の展示会などが復活の兆しを見せており、本研究が本来目指していた研究計画を遂行できる状況が戻りつつある。そのため、研究期間を1年延長し、この2年間で研究機会を奪われていた計画を出来る限り取り戻し、調査研究をしていきたい。ただし、昨今の国際情勢を考慮して、海外での事例研究は自粛し、主に国内での事例研究を中心としたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の流行が終息を見ることなく、2021年度に予定していた東京・並びに福岡で開催を予定していた研究会がオンラインの形態に変更になり、それに伴って当該研究会に参加するための旅費・ゲストスピーカーへの謝金が支出出来なくなったほか、ARテクノロジーの展示会やアートイベントの中止や延期が相次ぎ、調査のための旅費を支出できなかったため。 当初予定していた研究計画は新型コロナウイルス感染症によって遂行が難しい状況が続いていたが、2022年度は感染症の終息と各種公演やイベントの復活の兆しが見えてきたため、研究期間を1年延長して、国内調査旅行を意欲的に行う他、AR関係の文献の収集を積極的に進めることにしたい。
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