研究課題/領域番号 |
19K21576
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
山田 実 筑波大学, 人間系, 教授 (30525572)
|
研究分担者 |
荒井 秀典 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, 理事長 (60232021)
|
研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2022-03-31
|
キーワード | サルコペニア肥満 / 超音波画像 / インピーダンス / 転倒 |
研究実績の概要 |
サルコペニア肥満の定義については、国際的にみても未だ明確に定められておらず、それぞれの研究者・研究グループによる操作的定義に留まっているのが現状である。その中でも、欧米諸国の報告では「サルコペニア」と「肥満」をそれぞれ異なる指標で判定し、両者を兼ね備える場合にサルコペニア肥満と定義することが一般的となりつつある。しかし、アジア人ではこれら両者を併存する割合は非常に少なく、独自の定義を定める必要があると考えている。 我々は2018年に地域在住高齢者1260名に対し、生体電気インピーダンス計による体組成計測、超音波画像診断装置による大腿前面筋測定、筋力測定などを実施しており、それぞれの測定値より幾つかのサルコペニア肥満関連指標を算出している。本研究では、ここで作成した指標の予測妥当性を検討するため、2018年の測定から2年後にあたる2020年にアウトカムとなる転倒発生状況について調査した。2020年1月に郵送調査、3月にリマインダー発送を行い、4月より分析を実施した。1159名よりアウトカムデータの回収ができた(回収率:92%)。 その中で、超音波画像および生体電気インピーダンスデータより作成した2つの指標と転倒発生との関連性について検討した。一つ目の指標は、超音波画像によるもので、骨格筋の質の指標であるエコー輝度と骨格筋の量の指標である筋厚を組み合わせた指標である。もう一つの指標は、生体電気インピーダンスデータによるもので、四肢の骨格筋量を全身の体脂肪量で除した指標(MFR)である。いずれの指標においても、数値の悪化に伴い転倒発生率が高まることが確認できた。 2021年度には、追跡調査となる身体機能計測を実施する予定である(パネル調査)。今回検討した2指標の変化を調査するとともに、身体機能の変化や有害健康転帰発生との関連性を検討する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
R2年度に実施した内容は、2018年に立ち上げたコホートにおける追跡調査である。2018年の測定から2年後にあたる2020年にアウトカムとなる転倒発生状況について調査した。2020年1月に郵送調査、3月にリマインダー発送を行い、4月より分析を実施した。1159名よりアウトカムデータの回収ができた(回収率:92%)。 従来の「サルコペニア」と「肥満」をそれぞれ異なる指標で判定し、両者を兼ね備える場合をサルコペニア肥満と定義した場合、サルコペニア肥満に該当する方の割合は極めて低く、65-69歳では男女ともに0%、80歳以上でも男性2.2%、女性1.6%であった。サルコペニア肥満に該当する場合、転倒発生率は高まる傾向にあったが、このように有病率が低すぎることから有用な指標とは言いにくい結果であった。 これまでとは異なる指標として、超音波画像および生体電気インピーダンスデータより2つの指標を検討した。一つは、超音波画像によるもので、骨格筋の質の指標であるエコー輝度と骨格筋の量の指標である筋厚を組み合わせた指標である。もう一つは、生体電気インピーダンスデータによるもので、四肢の骨格筋量を全身の体脂肪量で除した指標(MFR)である。いずれの指標においても、明確な基準が存在しないために5分位によってカテゴリ化し、それぞれの転倒発生率を比較した。その結果、低筋質*低筋量の組み合わせ、低MFRの両者ともに転倒発生率が高まる結果が得られた。
|
今後の研究の推進方策 |
2021年度には、追跡調査となる身体機能計測を実施する予定である(パネル調査)。今回検討した2指標の変化を調査するとともに、身体機能の変化や有害健康転帰発生との関連性を検討する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2020年度に実施した調査に関わる費用が想定よりも抑えられたため。
|