研究課題/領域番号 |
19K21584
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
岡本 正吾 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (10579064)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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キーワード | 動作シミュレーション / 膝関節症 / 電流刺激 / 福祉機器 |
研究実績の概要 |
関節症などを理由とする運動機能障がい者を支援・介助する機器を開発する際,疼痛を有する実際の患者が試験に参加して十分なデータを供することは,倫理・安全面から許容されない.そこで,疼痛の代わりに健常者の皮膚に電流刺激を与え,健常者に疼痛患者の動作を模擬させるというシルバーシミュレーションを開発することが本研究の目的である. 2019年度末までに,片側膝関節症患者の動作を模擬するために,経皮電流刺激を膝部に与えて,疼痛の代替刺激とする手法の有効性を確認してきた.具体的には,1) 経皮電流刺激を印加する場所の検討,2) 電流刺激の強度を決定するための疼痛と関連する物理量の検討,3) 電流刺激を用いた起立・着座の動作模擬(シミュレーション)実験を実施してきた.1)について,電流刺激が筋収縮を引き起こさない事,経皮電流刺激が安定して知覚できる事を条件に,膝内側部へ刺激を提示することとした.2)について,文献調査をもとに,膝に加わるモーメントに単調増加するように電流刺激を提示する方法を検討した.パルス刺激を使用することとし,連続するパルスの提示間隔を膝モーメントに応じて操作する方法が適しているという結論に達した.他の方法では,例えば,電流によって本当に痛みが生じてしまう恐れがある.3)について,主に実験環境の整備を行い,予備的な実験を実施した.疼痛の代替となる電流刺激を用いた動作シミュレーションを起立・着座動作に適用したところ,動作速度や体重心の特徴について,健常者のシミュレーション動作と患者の動作の間に類似性を見出した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
シルバーシミュレーションの可能性を調べる(1)参加者実験および,(2)人間の動作を統計的に分析する手法である主動作分析の開発が順調に進んでいる. (1)では,片側膝関節症患者の典型的な動作が経皮電流刺激を疼痛代わりに用いたシミュレーションによって観察された.電流刺激が,痛みの代替刺激として直感的であるとの内観を得ており,疼痛の代替刺激としての可能性の高さが示された.(2)主動作分析法は,複数の実験条件や被験者の個性が存在するときに,狙った動作特徴を分析することができない場合があるという問題があったが,そのような要因をマスクして,狙った動作特徴を集中的に分析する手法を効果的に導入できつつある.
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は健常者のシミュレーション動作と患者の動作を統計的に比較する主動作分析法の開発と適用を中心として研究を進める.その理論の整理と一般性の確認を主体とする.前者については,多次元時系列動作の解析手法として主動作分析を改良している.後者については,研究グループが所有する歩行動作のデータへの適用も始めている.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスのパンデミックにより、予定していた海外出張(キャンセル)と、物品調達(2020年度に繰り越し)の予定が変更になったため。海外発表は2020年度に再度、設定する。
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