研究課題/領域番号 |
19K21588
|
研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
増本 康平 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 准教授 (20402985)
|
研究分担者 |
塩崎 麻里子 近畿大学, 総合社会学部, 准教授 (40557948)
原田 和弘 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 准教授 (50707875)
|
研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2022-03-31
|
キーワード | 意思決定 / 高齢者 / 認知機能 / 加齢 / 自律 |
研究実績の概要 |
寿命と健康寿命の差,つまり自立した生活が困難な期間は約10年ある。WHO(2002)は自立した生活が困難となってもウェルビーング,生活の質(QOL)を維持するには,個人的なことがらを自己決定(意思決定)できる「自律」が重要とであるとしている。現在,ビッグデータや人工知能による高齢期の自律支援が進められている。しかしながら人の思考は合理的ではなく,選択や判断の際には認知バイアス(非合理的な選択の偏り)が生じる。特に高齢期では加齢に伴い合理的判断の基盤となる認知機能が低下するため,どれだけ客観的・合理的な情報であっても認知バイアスを考慮した情報提示でなければ,適切な判断や行動に結びつかない。しかしながら,高齢者の自律支援において,どのような情報提示のあり方が最適なのかついて,十分な検討がなされておらず,確立された手法も存在しない。 そこで本年度は,特にWebを介した購買行動に着目し,商品の価格,出品者の顔写真の表情,商品に対する他者の評価といった情報が,高齢者の商品選択に及ぼす影響について検討した。 高齢者100名(平均年齢=71.74歳, SD=3.86)を対象とし,商品選択課題,認知機能検査(WAIS-Ⅳ)を実施した。 その結果,出品者のポジティブな表情は他の条件(ニュートラル,ネガティブ,顔写真なし)に比べて購買意欲を促進する効果があることが示された。価格については,高価格条件が平均価格,低価格条件よりも有意に低い購買意欲を示したが,低価格条件と平均価格条件の間に有意差はみられなかった。商品に対する他者の評価については,サービス提供者の表情がネガティブであり,また高額であるにも関わらずレビュー評価の高い物件に対し不信感を抱くことが示された。また,認知機能との関連性を検討したところ,認知機能が高い人は表情よりも定量的に評価が可能である価格などの条件を重視していた.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナウィルスの影響で年度末に予定していた実験を実施することができなかったため。
|
今後の研究の推進方策 |
2020年度は,コロナウィルスの影響を受けにくいWEB上でも実施可能な課題を中心に実施する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本研究は高齢者を対象とた対面での実験によりデータを収集する。本年度は,年度末に予定していた実験をコロナ禍で遂行することができなかった。そのため,それに関わる費用を繰り越し,2020年度に実施する予定である。
|