自立した生活が困難となってもウェルビーング,生活の質(QOL)を維持するには,個人的なことがらを自己決定(意思決定)できる「自律」が重要である。しかしながら高齢者の自律支援において,どのような情報提示のあり方が最適なのかついて,十分な検討がなされておらず,確立された手法も存在しない。そこで本研究では,高齢者に最適化された情報提示方法の確立と社会実験による最適化された情報提示方法の妥当性・信頼性の検証を行うことを目的とした。 最終年度である本年度は,環境配慮行動を促進するための教育ビデオと目標フレーミングメッセージ(例:ポジティブフレーム:節電すれば地球の温暖化を遅らせることができる,ネガティブフレーム:節電しなければ地球の温暖化を遅らせることはできない)が,環境問題の意識や環境配慮行動の意欲に及ぼす影響について,20歳から70歳までの588名を対象とし検証した。その結果,環境配慮行動は教育ビデオによって促進されたが,若年者と同様に高齢者においても目標フレーミングの影響を受けなかった。 研究期間全体の成果として,購買行動の意思決定において,高齢者は商品とは関係のない情報(例えば,商品のレビューアーの表情)の影響を受け,また,商品の詳細な情報に若年者ほど注意を向けないことが示された。また,人生の重要な意思決定において,悔いのない選択を行う上で,「知識を得る」,「決めることから逃げない」,「一度決めたことに固執しない」,「その時の最善の決め方をしたことを確認する」といったことが重要であることが示された。
|