研究課題/領域番号 |
19K21589
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
栗原 幸男 高知大学, 教育研究部医療学系看護学部門, 特任教授 (00215071)
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研究分担者 |
北岡 裕章 高知大学, 教育研究部医療学系臨床医学部門, 教授 (10274375)
片岡 浩巳 川崎医療福祉大学, 医療技術学部, 教授 (80398049)
兵頭 勇己 高知大学, 教育研究部医療学系連携医学部門, 助教 (50821964)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2023-03-31
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キーワード | 高齢者医療 / 臨床判断閾値 / 機械学習 / 医療情報利活用 |
研究実績の概要 |
本研究では、糖尿病、高血圧症および高脂血症のどれかの生活習慣病を持つ高齢者の医療情報追跡により急性循環器疾患(心筋梗塞、脳卒中等)の発症予測を可能とする臨床判断閾値を抽出することを目指している。本年度は、前年度の研究に基づいて対象患者の抽出を修正し、1991年から2010年の期間に3つの生活習慣病のどれかの診断後2年以上の外来受診歴のあるがんの化学療法を受けていない50歳以上の患者とした。この条件で、高知大学医学部附属病院の研究用データベースで検索した結果、10,651患者が抽出された。その内、急性循環器疾患を発症していたのは2,107例であった。 本研究者等は、生活習慣病の悪化が急性循環器疾患の発症に寄与すると考えてたが、急性循環器疾患発症例における生活習慣病の合併症診断のある症例は112例(急性循環器疾患発症の約5%)と多くはなかった。この112例では、生活習慣病合併症の診断日から急性循環器疾患の診断日までの平均日数は生活習慣病の診断日から急性循環器疾患の診断日までの平均日数よりも150日以上短いことが分かった。その意味では本研究者等の推測は正しいと言えるが、急性循環器疾患発症の予測精度を高めることへはあまり寄与しない。問題点としては、生活習慣病進行の同定を合併症診断に求めた点にあると考える。今後は、この点を再検討して研究目標の実現を目指す。 なお、前年度本研究の一環として調査した入院在院日数の電子カルテ導入の効果についての分析で、高齢患者で短縮効果が顕著であることを発見していたが、今年度さらに分析を進めた。その結果、短縮効果は3~4年継続し、入院在院日数短縮に効果が大きいとされていた診療報酬制度DPCの導入よりも結果的に大きな効果があることが統計的に確認できた。この結果は論文として公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
生活習慣病の悪化同定の指標として合併症診断を考えていたが、合併症診断が多くないことが分かった。その結果、生活習慣病の悪化同定指標を見直すことが必要になった。結果として、当初の研究計画よりも、遅れることとなった。
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今後の研究の推進方策 |
本年度、生活習慣病の悪化が急性循環器疾患の発症に寄与するとの予測は間違っていないことが確認できた。次年度は、生活習慣病の悪化同定指標を確定し、それらと急性循環器疾患発症の他の要因との影響度比較を中心として進める。当初の研究目標を達成することは困難になったが、急性循環器疾患の発症予測における生活習慣病の悪化の影響度をより定量的に示し、本研究分野の発展に寄与するよう尽力する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度も新型コロナウィルス感染症の拡大が国外内で続き、海外旅費に加え国内旅費もあまり執行できなかったため、次年度使用の予算が増えた。2022年度は国内外の学術集会の開催が増えて来ているので、積極的に参加し、旅費の執行を行う。また、オープンジャーナルへの投稿も積極的に行い、予算を執行する予定である。
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