研究実績の概要 |
本研究では,要支援高齢者の10年間の医療給付,介護給付,要介護認定に関するデータを連結することにより,高齢者が有する疾患内容とその併存数を示す疾患プロファイルを明らかにし,死亡に至るまでの長期的な予後を予測するモデルを解明することを目的とする.2022年度は,2021年度の介護医療給付データを収集し,2021年度までの10年間のデータを入手することができた.収集したデータ項目は,これまでと同様,対象者の医療給付(疾病,傷害および死因の統計分類要ICD-10による疾病分類,入院・外来の区分ならびに診療点数),介護給付(居宅・地域密着型・施設サービス等の種別と介護給付費),要介護認定情報(要介護度,自立度などを含む要介護認定調査項目),死亡日,各自治体からの転出日である.分析は統計ソフトを用い,新規認定時から5年間の死亡者405名(男性216名,女性189名,死亡時年齢85歳)を対象として死亡前1年間の医療費利用軌跡と介護費利用との関連について混合効果モデルにて検討した.その結果,居宅系介護保険サービスを利用することは医療費減少群(47名)において,医療費が増加する方向に影響していた(coefficient=1.48, 95%信頼区間=1.35~1.62).また,施設系介護保険サービスを利用することは医療費増加群(159名)においては,医療費が減少する方向に影響していた(coefficient=0.59, 95%信頼区間=0.50~0.69).さらには,居宅系介護保険サービスと施設系介護保険サービスの双方を利用することは,医療費高維持群において医療費を減少する方向に影響していることが示された(coefficient=0.53, 95%信頼区間=0.41~0.63).
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