研究課題
本研究では、筋肉からマイオカインが血中に分泌され、マイオカインにより尿細管からの一酸化窒素(NO)産生が亢進し、腎髄質循環と低酸素が改善するという仮説を立てた。この仮説を検証するため、腎臓生理学的な動物実験、ex vivoライブイメージングおよび細胞実験を行った。動物実験では、前年度の腎臓生理学的な解析で運動負荷にて血中濃度が上昇したマイオカインの1つであるアイリシンについて、レーザードップラーによる腎局所血流測定を行った。アイリシン投与により腎髄質血流の上昇を認めたが、全身血圧や脈拍、腎皮質血流に変化が認められなかった。加えて、血中アイリシンを上昇させるフラボノイドを腎静脈圧上昇に伴う腎血流の低下により腎間質線維化が進行する動物モデルに投与したところ、腎髄質外層にて線維化マーカーのフィブロネクチンやコラーゲンの発現抑制が認められた。ライブイメージングでは、カルシウム蛍光プローブのFluo-4を用いて集合管細胞でのアイリシン刺激による細胞内カルシウムイオンの変化を確認した。アイリシン濃度依存的な細胞内カルシウムイオンの上昇が認められ、アイリシン投与による腎髄質血流の上昇には内皮型一酸化窒素(eNOS)を介したNO産生が関与していると考えられた。細胞実験では、集合管細胞をTGF-b1誘導性に線維化し、アイリシン効果を検討した。TGF-b1刺激は線維化マーカーのフィブロネクチン及び上皮間葉形質転換のマーカーであるNカドヘリンの発現を上昇させたが、アイリシンはこれらの発現上昇を抑制した。加えて、先行研究にてTGF-b1誘導性に異常の認められた解糖系酵素群の遺伝子発現についてもアイリシン刺激により正常化した。以上より、マイオカインの1つであるアイリシンは尿細管からのNO産生を亢進させ、腎髄質循環と低酸素状態を改善させるとともに、尿細管細胞にも保護的に作用していると考えられた。
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Hypertension Research
巻: 44 ページ: in press
10.1038/s41440-021-00635-z
https://tohokupd.jimdofree.com/