研究実績の概要 |
時間栄養学として、規則正しい食生活は、概日時計にメリハリをもたらし抗肥満効果や睡眠の改善などが得られる。老化により概日時計は減弱し、睡眠などにも乱れが生じるが、時間栄養学的処置は老化による概日時計変化を改善し、さらに老化に伴う運動機能変化等を予防する可能性がある。一方で、老化に対する時間栄養学的な処置の作用メカニズムとして、食事時刻制限によるミトコンドリア機能変化が考えられる。ミトコンドリアDNA修復酵素の老化促進モデルマウス(Polg mutant)を用いることで、作用メカニズムにも迫ることとした。 WTマウス、Polg mutantマウスに、3ヶ月齢から食事時刻を制限する(Time-restricted feeding, TRF)群、コントロールとして自由摂食群(Free-feeding)群を設定し、飼育した。約3ヶ月おきに、運動試験(grip strength test, rota-rod test, treadmill test)を行い、Polg muntatマウスで既に報告されている老化の表現系を計測し、TRFの影響を調べた。また、輪回し活動リズムを測定することで、概日時計への影響も調べた。 Polg mutantマウスでは、WTマウスと比較して、4ヶ月齢で既に輪回し活動の低下が見られ、10ヶ月齢にて運動機能低下が見られた。また、10ヶ月齢では恒暗条件下にて行動リズムの後退が見られ、概日時計の周期変化が示唆された。暗期12時間のTRFは、WT, mutant共に体重増加を抑えた。カロリー制限はマウスの寿命延伸効果が報告されており、またTRFは国際学会にて米国のグループがWTマウスで寿命延伸効果を報告しているので、本研究結果はTRFがミトコンドリア機能を介して寿命延伸をもたらしていることを示すと考えた。
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