研究課題/領域番号 |
19K21601
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研究機関 | 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 |
研究代表者 |
山本 拓也 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所, 医薬基盤研究所 免疫老化プロジェクト, プロジェクトリーダー (60752368)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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キーワード | 免疫老化 / 非ヒト霊長類 / テロメア / T細胞 / フローサイトメーター |
研究実績の概要 |
本研究課題では、ヒトに極めて近縁であると考えられる非ヒト霊長類カニクイザルから得られる血液、組織由来検体を用いて、加齢に伴う免疫老化現象を、特に獲得免疫の変化に着目して分子レベルで解析する。その情報をもとに、免疫老化現象の実態を個体レベルで解明することを目的としている。 今年度は、高齢サル(20歳以上)と若齢サル(10歳以下)の末梢血単核細胞(PBMC)を用いて、加齢に伴う免疫反応の変化に関して比較検討を行なった。結果として、ヒトで報告されているように、高齢サルは若齢サルと比べてPBMC中のCD4陽性およびCD8陽性Naive T細胞の割合が有意に低下していることを確認した。またこのNaive T細胞において、加齢に伴いテロメラーゼ活性が低下すること、テロメア長が短縮することを見出した。一方で、記憶T細胞に関しては、Effector memory T細胞の割合が高齢サルにおいて増大していることが確認された。PBMCをin vitroで抗CD3抗体刺激を施した際には、記憶T細胞からのTNFをはじめとする炎症性サイトカイン産生が若齢サルと比較して高齢サルで亢進していた。 以上より、少なくとも加齢に伴う獲得免疫系の変化に関しては、ヒトとカニクイザルにおいて類似性が見られ、非ヒト霊長類の免疫老化研究への有用性が示唆された。 上記に加えて、各種T細胞サブセットの質的、量的変化を同時解析可能なフローサイトメーターパネルを作成した。現在、このフローサイトメーターパネルにp16をはじめとする細胞老化マーカーを加えることで、各種T細胞サブセットの老化状態を包括的に解析している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた通り、非ヒト霊長類モデルの免疫老化研究への有用性を示すことに成功した。さらに次世代型フローサイトメーターを用いた高次免疫学的解析プラットフォームを確立した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策としては、初年度に引き続き、本研究課題申請時にかかげた研究計画を推進する。具体的には、様々な年齢層のカニクイザル由来Naive T細胞の機能解析として、T細胞受容体(TCR)刺激依存的な活性化能、サイトカイン産生能に関して次世代型フローサイトメーターを用いて解析する。加えて、Naive T細胞について全mRNA遺伝子発現解析を次世代シーケンサーで行うこと、ならびにTCRレパトア解析を行うことにより免疫老化現象の分子メカニズムに迫る。
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