研究課題/領域番号 |
19K21602
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
曽根原 理 東北大学, 学術資源研究公開センター, 助教 (30222079)
|
研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2022-03-31
|
キーワード | 近世仏教 / 聖徳太子信仰 / 潮音道海 / 依田貞鎮 / 大成経 / 東照権現 / 黒本尊 / 排仏論 |
研究実績の概要 |
近世の聖徳太子信仰を解明する手がかりとして、ここ数年、関連資料の調査を続けてきた。その成果報告の一端として、(仮)近世仏教関係資料集(全10巻を予定)のうちの1冊を担当することになったので、国家を守護した神仏(東照権現や黒本尊)に対する信仰などとあわせ、『大成経』関係資料の翻刻と解説を収録することとした。 聖徳太子の秘伝として近世初期に「発見」された『大成経』は、儒学者や経世家たちの排仏論に反論する人々によって広められた側面がある。今年度は国会図書館などで、聖徳太子や仏教を擁護する立場から大部の著作を著述した潮音道海(1628-95)や依田貞鎮(1681-1764)等の資料を収集した。また数年来同じ問題意識にたち調査研究を継続しているW.J.Boot(ライデン大学名誉教授)、M.M.E.Buijnsters(同講師)等の方々との共同研究の成果を生かすため、2019年11月にオランダへ渡航し打ち合わせを実施した。その結果、資料集に収録する書目および底本を選定することが出来た。 ボート氏らとの相談にもとづき、曽根原は主に東照権現や黒本尊などの護国の神仏に関する資料を担当し、ボート氏らは林羅山の排仏論などを意識し作られた、潮音や依田の著作を担当する予定である。翻刻を行う資料の選定、写真撮影を進め、すでに4~5点ほどの翻刻を作成するに至っている。ただし、諸本間の異同や、解説作成などの作業が残されており、なお必要な作業は少なくない。 その他令和元年度は、近世宗教に関する国際会議に参加し比較文化史的観点から議論を行った。また、日本における民間信仰について調査し、近世の神秘思想に関する情報の収集も行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
近世仏教に関する資料集として、『大成経』や聖徳太子信仰に関する調査研究と翻刻作業を行い、本研究の期間内に完成させるペースで作業を進められている。すでに刊本として翻刻が作成されている書目(『黒本本尊縁起』など)の調査を一通り済ませ、未翻刻で、翻刻することにより研究の進展が見込まれる資料を選定することが出来ている。あと2年間で翻刻と解説を作成することは、可能な範囲であると見込んでいる。
|
今後の研究の推進方策 |
数多い『大成経』関連書の中で、今回の資料集に採録できる範囲は、ほんの一部であることから、資料集の刊行を進める一方で、その他の関連書についても収集、調査、分析を進め、論考などの形で公開することを検討したい。また、新型コロナウイルスによる現在の混乱状況がおさまった段階で、オランダの研究者などとの共同研究を本格的に再開し、近世の神秘思想の実態について解明を進めたい。その成果についても、研究期間のうちに国内外で報告する機会を設けていきたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
令和2年2月以降、新型コロナウイルスの感染拡大により、予定していた出張ができなくなった結果、8万円強の次年度繰り越し金が生じた。これについては、事態が鎮静化した段階で、当初予定に沿って出張し調査を進めることによって、経費を使用することを考えている。
|