研究実績の概要 |
前年度の眼球運動計測結果と特に固視fixationクラスタ分布を確認した。それより、Caravaggio絵画は主題に関わる領域に視線を集めるという作業仮説を立てた。行動・眼球運動計測実験は、前年度同様にfMRIの予備実験と位置づけ、課題画像のオリジナルの自由鑑賞を加えて、Change blindness (CB)実験を行った。計測(Tobii Pro TX600使用)実験では、見ていた箇所と固視時間などの基本的な解析と絵画の主題と関連する関心領域(ROI)を使って見た箇所の時系列パターンの解析をおこなった。被験者は24名の学生と院生。 行動結果については、CB実験での参加者の平均Accuracyは0.80、Hit率は0.61、False alarm率はほぼ0だった。 眼球運動計測で、自由鑑賞でのROIでの合計滞留時間を調べたところ、CaravaggioのほうがCaravaggeschiよりROIの滞留時間が有意に長かった(t(23) = 3.13, P = 0.0047)。またCaravaggioのほうがMondrianよりROIの滞留時間が有意に長かった(t(23) = 4.05, P = 0.0005)。 CaravaggeschiのほうがMondrianよりも滞留時間が長いが、多重比較を考慮すると有意とはいえない(t(23) = 2.20, P-unc = 0.038)。 CB実験でのROIでの合計滞留時間を分散分析により調べたところ、絵画の種類の主効果が有意(F(2,46) = 67.2, P < 0.001)、交互作用が有意(F(2,46) = 3.26, P = 0.047)だった。ROIに視線が移動する頻度を上記と同様に解析すると、有意性が上記と同じ傾向になる。 以上より、参加者はCaravaggio絵画のときにより長くROIを見ていた。この結果は作業仮説を支持する。
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