研究課題/領域番号 |
19K21607
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
大谷 智子 明治大学, 総合数理学部, 助教 (40422406)
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研究分担者 |
藤木 淳 札幌市立大学, デザイン学部, 教授 (10457418)
丸谷 和史 日本電信電話株式会社NTTコミュニケーション科学基礎研究所, 人間情報研究部, 主任研究員 (20626634)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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キーワード | 仮想世界指向 / インタフェース / メディア芸術 / 知覚法則 |
研究実績の概要 |
2019~2020年度は,人にやさしいデザイン原理の要素抽出と物理法則を逸脱した仮想世界コンテンツの作成を同時進行とし,議論と成果を共有しながらアジャイル型の開発を行うことを計画した。2020年度は知覚心理学とインタフェースの二側面からコンテンツの評価実験を実施する予定であったが,COVID-19の影響もあり,当初の実験計画を変更した。人にやさしいデザイン原理の要素抽出のため,仮想世界の理解や操作性に関する予備調査を行った。この調査では,2019年度に提案した,仮想世界指向インタフェースを備えたゲームシステムを用い,仮想世界を制御する物理的インタフェースの使用について学習効果を検討した。その結果,物理的インタフェースによる仮想世界におけるルールの変更は,その因果関係に対する体験者のメンタルモデルから掛け離れていた場合においては適切に利用することが難しいが,そのようなインタフェースであっても習熟により使いこなすことができ,非現実的な手段により目的を達成できることが可能であることが分かった。体験者のメンタルモデルに沿ったインタフェースのデザインが課題として抽出された。 次に,人間の知覚系の特性を考慮したメディア表現の可能性を検討するため,視点が移動した時に短時間生じる過渡的な知覚の表現を試みた。具体的には,人間の中心視で視解像度が高いという視覚特性を考慮して,複数視点から撮影した立体の画像をフィルタリングしたのち重ね合わせ,立体を移動しながら観察したときの知覚を模す写真を作成・展示した。これとは別に,仮想空間での情報提示の新原理を探究するため,幾何学的錯視の三次元解釈における三次元構造と錯視量の関係を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度は,COVID-19の影響をうけ,人にやさしいデザイン原理の要素抽出に関する実験や行動検証の計画を変更した。他方,新規の物理法則を逸脱した仮想世界コンテンツの作成や,仮想空間での情報提示の新原理を探究の予備検証などを進めた。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は,人間行動の基礎科学のアプローチとして,コンピュータゲームに代表されるインタラクティブなコンピュータグラフィックスコンテンツで実現可能な時空間表現のうち,縮尺や表現座標が変化しても同一のものと認知できる条件について考察を行い,それを確かめることのできる思考・心理学実験を実施する予定である。具体的には,二次元の地図的表現と三次元の一人称的な空間表現が切り替わる際に,それが同一のものと感じられる時間条件を心理学実験により追求する。この実験結果を基に,仮想世界インタフェースの課題点を洗い出す。 非現実的なメディア表現のアプローチとしては,これまでの検証を元に,抽出された要素を中心に,物理世界の制限にとらわれない,仮想世界でのみ実現可能なデザインをメディア芸術表現として実装する。具体的には,視覚のみならず,聴覚や触覚など,様々な感覚器官において,体験者に非現実的印象を抱かせる表現手法の開拓をする。これにより,仮想世界指向インタフェースのマルチモーダルな展開を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の影響により,当初予定していた対面で実施する実験を中止したため。実験計画を見直し,2021年度は実施する予定である。
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備考 |
東京都現代美術館「おさなごころを、きみに」展(2020.7.18-9.27)に《錯視地図A city composed of optical illusions》《P055E5510N》《A Day in their lives》を出展。 札幌芸術の森美術館 企画展「札幌美術展 アフターダーク」(2021.2.27-4.11)に《おいかけっこ》《1フレーム》《夜の朝顔》《オンとオフ》を出展。
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