研究課題/領域番号 |
19K21608
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研究機関 | 東京藝術大学 |
研究代表者 |
平 諭一郎 東京藝術大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (10582819)
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研究分担者 |
岩崎 秀雄 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (00324393)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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キーワード | 保存 / バイオメディア・アート / 芸術 |
研究実績の概要 |
本研究は、生物由来の細胞や生体高分子を媒体として用いたバイオメディア・アート作品の保存とは何を意味するのか、それを可能とする実践にはどのような方法論が必要なのかを探求するものである。今年度は、研究期間全体における助走として、文化財や美術品の保存・修復手法に加え、生命科学における延命・蘇生手法からアプローチして考察し、生体保存ないし恒常的復元のための最適解を探ることから研究を始めた。 文化財・美術品の保存・修復アプローチとしては、保存環境整備(空気、温湿度、光)、状態調査、科学分析(非破壊非接触)などがあり、それぞれの手法は対象となる文化財や美術品の種別によって様々なため、あらゆる手法からバイオメディア・アート作品を長期間展示(存続)するための適用性を判断していった。また、バイオメディア・アートのプラットフォームであるmetaPhorestのメンバーとも議論しながら、メディア・アートの保存・修復における代表的な手法である模倣(Emulation)、移行(Migration)、再解釈(Reinterpretation)、再制作・再演(Reconstruction)および、複製(バックアップ)が適用可能か、作品への介入前後で同一性が保持されているかを考察した。 生命科学の延命・蘇生アプローチとしては、すでにあるバイオメディア・アート作品を長期間「死なずに保存」するために代謝活性を出来るだけ落としつつ、蘇生可能な状態にして保存していく手法や、そもそも出来るだけ長持ちするバイオメディアや、再現が容易なバイオメディアを供することを目指した試作を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
対象とするバイオメディア・アート作品を選定する前段階として、バイオメディア・アートそのものの枠組みと位置づけおよび、美術作品、芸術自体の保存の有り様に関する検討、考察を優先的に実施したため、本年度におけるバイオメディア・アート作品を対象にした様々な保存・修復手法の実施を見送った。
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今後の研究の推進方策 |
今後の状況を鑑みながら、選定もしくは新たに用意したバイオメディア・アート作品を対象に、様々な保存・修復手法を実施しながら経過観察しながら、生体保存ないし恒常的復元のための最適解を探り、作品を生きて存続させる新たな保存方法を開拓する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究遂行に関わる経費の無駄を省くとともに、今年度に見送った研究計画を次年度に実施する研究費を確保したため。次年度は、展覧会形式での研究成果発表に関わる制作費、展示費、報告書発行費に使用する。
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