急速にグローバル化する今日の世界で、西洋由来の「アート/芸術」は、概念の上でも、また現実の存在様態においても大きな変化の過程にある。本研究は、グローバリズムと文化の相互作用を具体的に解明するとともに、そこに産出される個別的な作品・事象を精密に考証する、領域横断的な「グローバルアート学」を提唱する。研究チームは、専門領域・フィールドを異にする美術史家2名と音楽学研究者1名の計3名で構成し、芸術作品における「グローバルなもの」と「ローカルなもの」の交渉の過程や、起源を異にする文化的要素の「節合」のメカニズムといった、共通の問題軸に沿って課題に取り組む。これにより、交渉的・境界的な場に生じつつある「グローバルアート」の研究に固有の分析概念と方法論を提示し、従来なかった学術的枠組みを挑戦的に構築する。 本年度は、研究ワークショップを2回に渡り開催した(2021年12月14日「グローバルアート学の構築」研究会:発表者バン・ミナ 「加藤松林人と戦後の在日コリアン・コミュニティー」、2022年2月18日研究ワークショップ「グローバルアート学の構築に向けて」:発表者池上裕子「境界のモダニズム:真喜志勉とロジャー・シモムラを中心に」 )。 また、分担者・伊東信宏は、東欧音楽を軸としたグローバル・ポップ、分担者・池上裕子は戦後アメリカにおける日系アーティストをめぐる境界的なモダニズムの諸問題、代表者・岡田裕成は歴史的コンテクストから16世紀アジア太平洋地域におけるヨーロッパ美術の移転について、個別の研究を進めた。
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