研究課題/領域番号 |
19K21617
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研究機関 | 神戸市外国語大学 |
研究代表者 |
エグリントン みか 神戸市外国語大学, 外国語学部, 教授 (50632410)
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研究分担者 |
エグリントン アンドリュー 甲南女子大学, 文学部, 講師 (30707948)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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キーワード | 女性 / 舞台芸術 / 移動 / 記憶 / ディアスポラ / オリエンタリズム / フェミニズム / ポストコロニアリズム |
研究実績の概要 |
本研究は、男性西洋中心主義が根強い社会と社会を映し出す鏡である舞台芸術にある関係性を、アジア人・日本人の女性の視点から考察しながら、主流の言説から取りこぼされがちな「女なるもの」の舞台表象を再検討する。 国立台湾師範大学、ニューヨーク市立大学、ロンドン大学の三機関に客員研究員として属し、キューバ、ドミニカ、ハイチ、イタリア、ドイツ、セルビアの芸術祭、演劇祭、劇場や美術館などの文化施設を訪れ、社会と舞台芸術の関係性と女性の位置と表象を探るフィールドワークを行った。その一環として、アジア圏にある日本を離れ、彼の地でディアスポラとして舞台芸術活動を展開してきた女性アーティストたちに取材し、その一部を英字新聞The Japan Timesの日曜版特集シリーズ'Why did you leave Japan?'に寄稿した。この記事を元に海外で活躍する日本人女性アーティストに焦点を当てた書籍プロジェクト'Reorienting the Orient: Identity, Migration and Performance'をニューヨーク市立大学大学院センターマーティン・シーガル演劇センターにて英語で口頭発表した。また、東京の日独文化研究所にて、私が主要メンバーの一員であるアジア女性演劇会議についても英語で口頭発表した。 並行して、大日本帝国のアジア植民地支配から原発といったタブーを扱って講義を呼び、一時期中止に追い込まれた「あいちトリエンナーレ」の『表現の不自由展』や、非「西洋」のアーティストだけで演劇祭を成立させたKyoto Experiment、私がプロジェクトメンバーを務める京都・東九条にオープンしたTheatre E9についての記事や劇評などを、The Japan Timesや劇場ウェッブサイトに寄稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前半は、台北、ニューヨーク、ロンドンという三つの演劇都市に加えて、北南米、東西ヨーロッパの国際学会や演劇祭、芸術祭に精力的に参加し、フィールドワークと資料収集しながら、研究成果を口頭発表、新聞記事、論文として日本語と英語で発表した。 後半は、再びニューヨークに戻って残り半年となった在外研究期間を過ごすつもりであったが、新型コロナウィルスの全世界的な蔓延に伴い、予定を大幅変更して、国内での在宅を中心にしたデスクワークに切り替えざるを得なかった。しかしながら、アジアと女性と舞台芸術に関する先行研究を批判的に読み込み、研究初年度に予定していたプロジェクトを軌道に乗せることができたため、研究はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画を立てた2019年度の時点では予想だにしなかったことだが、新型コロナウィルスの全世界的な蔓延によって、2020年度7月に英語口頭発表を計画していたクロアチア・リエカでのPerformance Studies international(PSi)、アイルランド・ゴールウェイでの国際演劇学会(IFTR)、英語戯曲翻訳を担当する予定であった静岡文化芸術センターのふじの国演演劇祭などを筆頭に、国内外の演劇学会や演劇祭、芸術祭がことごとくキャンセルされてしまった。これらは2021年度に延期されて開催される見通しがあるため、2020年度の国内外出張リサーチの一部を繰り越して行う予定ではあるが、未だ不確定要素が多く、先行きが見えない状況が続いている。2020年の東京オリンピックに対し批評的・批判的距離を置きつつ、女性・アジア・移動・水をテーマにしたアジア女性演劇会議を東京で行う予定であったが、こちらも延期せざるを得ない。コロナ以前と以後では、作り手と観客が「今、ここ」を共有することが多かった演劇の概念のみならず、人が集う形態、方法、意義すらも変えてしまったことに加えて、研究代表者が2020年度前半に産前産後休暇、分担者が2021年度後半から育児休暇を取ることになったこともあり、現在も一部研究方法を調整中である。状況を一堂に会しての集会ではなくオンラインでの意見交換が推奨されている現在、フィールドワークではなくデスクワークを中心に行い、先行きが見えない社会・経済状況に左右されるのではなく、それらを舞台芸術はいかに写し込むのかをクリティカルかつクリエイティブに読み込みながら、The Japan Timesに掲載された記事を足がかりに、いまだ包括的な批評書が出版されていないアジア・女性・舞台芸術に関する蓄積した知を広く公開・活用できる書籍とウェッブアーカイヴを構築していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの蔓延のため、出席を予定していた国内外のミーティング、演劇公演、芸術祭、国内学会、国際学会などがキャンセルされてしまった。国際演劇学会、PSi、ふじの国演劇祭などは2021年度以降に延期となったため、その出張費用に充当する予定である。
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