研究実績の概要 |
コンテストでの受賞歴のあるプロのピアニスト、鯛中卓也氏、古屋(田中)絵理氏、片山 柊氏の協力を得て、ポリフォニーであり、解釈による演奏表現の変容が明確な課題曲3曲(F.Chopin: Prelude No.1, J.S. Bach: The Well-Tempered Clavier Book II No.1 in C major, BWV870, J.S. Bach: Partita in B-flat major, BWV 825)について、演奏プラニングの条件を変えて収録を行った。具体的には、フレーズ構造解釈、モチーフ優先とするか和声優先とするか、さらに、これらのいずれかについてテンポを変えるという3条件を弾き分ける形での演奏を依頼し、演奏プラニングに関する聞き取りを実施した。収集した演奏データには、音源、MIDIによる演奏制御データ、タッチに相当するデータが含まれる。 研究期間中、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で演奏収録の度重なる延期を含む研究計画の大幅な変更が必要となった。対面によるデータ収集や聴取実験が困難になる中で、聴取者がどのようなフレーズを捉えたかを演奏を参照しつつ測定するためのWebシステムを開発し、国内外で発表した。その結果、国内研究会ではBest New Direction賞を受賞した。 各演奏に対応する階層的なフレーズ構造(頂点、フレーズ境界)と演奏制御(MIDI)との対応の分析の結果、演奏者ごとにフレーズ表現に対する一貫性を持ったルールが存在することが確認された。詳細な状況の把握は今後の課題であるが、タッチに関しては打鍵と離鍵の双方において、単調なキーストロークと「戻り(戻し)」を含んだキーストロークの弾き分け制御が行われている可能性がある状況が確認された。
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