研究課題/領域番号 |
19K21624
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
小泉 政利 東北大学, 文学研究科, 教授 (10275597)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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キーワード | オーストロネシア語族 / タロコ語 / 対称態 / 危機言語 / コーパス / 談話研究 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,タロコ語(オーストロネシア語族,台湾)の対話の動画付きコーパスを作成して一般公開し,そのデータを用いて談話文法の研究を行うことである。タロコ語は若い世代に継承されなくなりつつある危機言語であるため,今すぐに記録や研究を行わなければ永遠にその機会が失われてしまう可能性が高い。流暢な母語話者が残っている現時点で,異なる世代の対話の記録を残しておくことは,タロコ族の言語と文化の継承において非常に重要な意味を持つ。また,タロコ語はVOSを基本語順とする能格言語であり対称態をもつなど,言語類型論的に極めて珍しく学術的に重要である。本研究は,タロコ語の対話コーパスを構築し,それを用いて対称態型VOS能格言語の談話内における構文選択がそれ以外のタイプの言語(日本語など)における構文選択とどのような点で共通しどのような点で異なるのかを明らかにし,談話文法理論の発展に貢献することを目指す。 今年度は、CHILDESに準拠した動画付きコーパスを作成するための動画撮影方法やトランスクリプトの作成方法などを検討し、参加協力者への説明文書や同意書などを用意した。また、動画撮影に必要な機材を購入し台湾に届けた。それを用いて予備的な動画撮影を行い、問題点を検証し改善をはかった。その上で、独話の撮影を開始した。さらに、動画の書き下ろし作業を円滑に進めるために、防音室を整備するととともに、タロコ語のコーディング方法についての検討を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定通り動画の撮影を開始し、トランスクライブについても目処がついた。また、書き下ろし作業を円滑に進めるための防音室を年度内に整備できたことは、当初の想定を上回る成果である。ただし、台湾現地で撮影やトランスクライブの協力者にトレーニングを行う計画は、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で来年度以降に延期せざるを得なかった。総合すると、研究は概ね順調に進展していると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
現地協力者に動画の撮影ならびにラフなトランスクライブの作業を継続してもらう。それと並行してコーディング手法についての検討を進める。また、今般の状況が改善するのを待って、現地でのトレーニングを行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
台湾現地に出向いて現地協力者に動画撮影方法やトランスクライブの手法についてトレーニングを行うとともにワークショップを開催する予定であったが、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて延期せざるを得なかった。来年度以降、状況が改善し次第、台湾を訪問し、トレーニングとワークショップを実施する。
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