研究課題
本研究は、日本語母語話者による第二言語として英語発話の音韻現象について分析的的かつ同時に探索的な視点から検討を行う挑戦的な試みである。このうち、子供を対象とした自由会話の録画分析の計画については、2020年度に引き続き2021年度は日本語を母語とする英語のearly learners(幼少期習得)の自由会話を録音して得られたデータから、第二言 語として英語を発話産出する際の様々な 音韻現象 を複数のポイントに絞って詳しく観察・分析する計画であった。しかし2020年度から引き続き新型コロナウイルスの蔓延により、対面での会話セッションの機会が制限され、さらに視線計測などの対面実験が予定通り行えないこととなったため、子どもの第二言語習得調査に主にインターネットを用いた遠隔セッションによる会話 録画およびそのデータ編集を中心に行った。これに加えて、2021年度は、その前年度からデータ収集対象となっていた1名の子供についてセッションを増やし、そのアノテーション作業にリソースを振り向けることとしていた。さらに、年度後半からは新たに2名の早期英語習得途上の子供を追加し、昨年度と同様に遠隔会議システムzoomを用いたセッションをほぼ毎週続け、記録を蓄積している。この新たな2名分のデータについては、前年度から収録していた動画データの二段階にわたる(テキスト、chat形式でアノテーションのついた形式)記録を進める予定で作業体制を調整をしており、さらに2022年度は対面のデータ収集が開始できるようにインフォーマントと実験者の調整もすすめている。一方、成人の英語学習者を対象としたオンライン実験のうち、2020年度以前にデータ収集が完了したものについては国内外の学会(主にオンライン開催)で成果発表を行い、論文投稿もすすめた。
3: やや遅れている
新型コロナウイルスの感染拡大により当初の計画には大きな変更を余儀なくされたが、子供の第二言語習得実験については既存のインフォーマントから得られるデータを増やす、新規の被験者を確保するなど、昨年度からの遅れを取り戻す努力をしている。対面実験は依然再開に至っていないが、既存のデータのアノテーションなどにリソースを振り向け、できる範囲で 研究を進展させた。成人対象の実験は、既存のデータの発表や論文化を中心にすすめた。
現在、遠隔調査を行っている新規の被験者(L2英語のearly learnerとしての児童)については、可能な範囲で対面での録画セッションに以降してよりインタラクティブな場面での録画データ収集を開始すべく調整中である。一方、現在会話セッションを継続し、蓄積している録画データについては2020年度および2021年度内でアノテーションを進めることができたため、屈折情報と主語の出現の関係や、数や時性の形態素の使用などについて分析を進め、統語知識、形態統語知識、語彙知識の習得の相互の関係についても検討をすすめたい。
新型コロナウイルスの感染拡大により当初の計画には大きな変更を余儀なくされ、本来当該年度に予定されていた複数の対面実験や、それに関わる人件費や旅費などの使用が次年度に持ち越されたため。2022年度は持ち越し分の助成金を用いてすみやかに対面実験をすすめ、また本来翌年度分としての配分額は、これらの作業を統括する研究員を雇用し、遅れを取り戻したい。
すべて 2022 2021 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 2件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (11件) (うち国際学会 6件、 招待講演 2件) 図書 (1件) 学会・シンポジウム開催 (1件)
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