研究課題/領域番号 |
19K21630
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
渡邊 真実 (村田真実) 大阪大学, 日本語日本文化教育センター, 講師 (90707738)
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研究分担者 |
岩井 康雄 大阪大学, 日本語日本文化教育センター, 教授 (30273741)
JIN ZHU 大阪大学, 日本語日本文化教育センター, 招へい研究員 (20790033)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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キーワード | 日本語教育 / 方言教育 / 方言聴解 / 音声学 / 音韻論 / 方言 / アクセント |
研究実績の概要 |
2019年度は、CEFRに準拠する留学生の日本語運用能力レベルと方言聴解力の差を明らかにするため、プレースメントテストおよび実際に行った授業をもとに、調査・分析を行った。 研究代表者および研究分担者の所属する大阪大学日本語日本文化教育センター(以下CJLC)ではセメスター毎に、プレースメントテスト(漢字、文法、作文、会話の観点から総合的な日本語運用能力をはかるもの)を行い、CEFRに準拠して留学生の日本語運用能力レベルを判定している。ここで判定された日本語運用能力と、方言聴解力の差を明らかにするべく、教室での授業の一部を使って方言聴解力を調べた。 CJLCにおいて、研究代表者が、留学生に対する方言・方言学の基礎知識を与える授業、そしてスピーチスタイルの違いに特化した聴解の授業を各2セメスター分行い、その結果を分析した。前者の授業のでは、方言音声で読まれた『桃太郎』の聞き取りを行った。後者の授業のでは、方言のみの会話、方言と共通語のコードスイッチングのある会話を教材とした。これにより、標準日本語に対する日本語運用能力のレベルと、方言聴解能力の間には大きな差があることが明らかとなった。 成果として、Japon Dili ve Egitimi Uluslararasi Sempozyumu (JADEUS 2019) (2019年9月、於トルコ共和国アンカラ大学)にて、「上下親疎好悪関係から理解する日本語のスピーチスタイル ―生教材を活用した聴解教育の実践―」と題した口頭発表を行い、トルコ語母語話者、日本語母語話者、日本語学習者、言語学者、日本語教育関係者と広く議論した。また、本発表を論文化したものは、JDIシリーズに掲載・出版される予定である(既に査読を経て採択されたが、新型コロナウイルスの流行のため刊行が遅れている)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナウイルスの流行のため、2020年1月ごろから校務に割くエフォートが高くなり、研究に遅れが生じている。また、本研究は方言話者の協力が必要であるが、同じ理由により調査を断念せざるを得なかった。更に、同時期以降の学会・研究会が中止され、他機関所属の研究者との議論が難しくなったこと、留学生と接触する機会に制限がかかったことも研究に遅れが生じた理由である。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルスが大学および社会に対してどのような影響を与えるかによって変わる。本研究課題は方言話者の方のご協力を必要とし、マイクの使用が不可欠であるため、新型コロナウイルスのもたらす社会不安が除かれるまでは、方言話者の方に対面調査のご協力をご依頼することは困難である。新型コロナウイルスが終息するまでは、オンラインでの通話による調査にご対応くださる話者の方を探し、音声の録音を行う。新型コロナウイルスが終息したあとは、当初の計画通り対面調査を実施する。 当初の予定では、2年目にはCJLCの留学生に試用版教材を使った効果の検証を行うこととしていたが、メディア授業が原則となったため、試用版教材および実施方法を大きく変える必要が生じた。今後はメディア授業およびそれに付帯する倫理的配慮にも対応した教材開発を行う。特に、メディア授業の教材として方言話者の方の音声を聞かせる場合、倫理的配慮が今まで以上に重要になる。よって、次の2点を定め、メディア授業化した場合の倫理的な問題を解決する。 1. 方言話者の方の音声を聞かせる場合、話者の方に改めてオンライン上ので音声を聞かせることに同意する旨を記載した書類にサインをしていただく(同意書や返信用封筒など、書類は郵送でやりとりする)。 2. 話者の方の音声が再配布されることを防ぐため、オンライン上からダウンロード出来ないように制限をかけて聞かせる。 本研究課題のほとんどの部分は人と相対して行うものであり、新型コロナウイルスの終息まではインターネットを用いて、オンライン上で柔軟に対応する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの流行により、2020年1月から3月までに予定されていた学会出席等がかなわなかったため、2019年度の予算執行を予定通り行うことが出来なかった。また、交付決定が4月1日ではなかったため、物品等についても購入に遅れが生じ、予定通りにいかなかった。 2020年度はメディア授業に対応した教材開発を行う必要が生じたことにより、研究・調査・実験・教育環境が初期の計画とかけ離れたものになる。そのために、計上した程度の予算が必要であると考える。
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