研究課題/領域番号 |
19K21631
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研究機関 | 山梨県立大学 |
研究代表者 |
高野 美千代 山梨県立大学, 国際政策学部, 准教授 (10289811)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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キーワード | 書物史 / 17世紀英国文化 / 書籍商 |
研究実績の概要 |
本課題は、「近世日英書物文化には偶発的類似が多く存在する」と仮定し、そのことを実証的に研究し、今後の書物史研究の発展の可能性を開拓することを目的とする。この目的を果たすために、初年度は、近世日英における書物史の様々な側面の比較研究を丁寧に進め、パラレリズムを実証していくための文献資料の調査収集を行った。 具体的には、日英の読書文化を比較検討するため、十七世紀に出版された英語文献から、歴史書、コンダクトブック、宗教書から、極めて特徴的な文献を選び、同じころ日本で出版された書物を比較検討することとした。書物に共通するテーマ、読者層、出版者、著者、書物の装丁など、本を構成する複数の要素からの考察を開始した。 初年度は、これと同時並行して、近世英国と日本の書物の出版と流通に関しての検討を進めるため、ロンドンの書籍商リチャード・チズウェルと京都の八文字屋八左衛門をはじめとする数名を選定し、そのビジネスの規模や扱うジャンル、顧客獲得方法、同業者組合との関係、出版統制の影響といった点に注目して比較検討を行うことを計画した。初年度実績としては日本の出版業者の考察までには至らなかったのであるが、ロンドン書籍商に関しては、チズウェル以外の主要書籍商による出版物の確認作業、個別の書籍商の政治的宗教的スタンスと扱った出版物の傾向を分析した。 以上の調査に必要な文献を調査収集し、精読する作業に時間を費やしたが、次年度以降の研究に必須となる資料を多く入手することができたのは収穫であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
採択結果が6月末に出された直後に研究に取り組み、必要な文献資料を調査収集することができた。分析と精読に時間がかかったので、成果をまとめるには至っていないが、今後本研究を遂行するのに有用な資料を国内外から複数入手することができた。
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今後の研究の推進方策 |
初年度に着手した検討課題への取り組みを継続して、歴史書・コンダクトブック・宗教書の精読と分析作業を行う。なるべく早い時点でその成果を論考にまとめて発表したい。その際には、関連する分野の専門家である国内外の研究者から、研究協力、専門知識の提供を幅広く得つつ、必要に応じて研究の方向性を修正しながら、日本語と英語での成果公開を考えている。 並行して、近世英国と日本における読書と庶民の生活を2年目のテーマとするが、日英両国において庶民に読書がどのように浸透していたのかを、識字率と教育、印刷物のジャンルといった点に特に注目して探究し、読書の文化から知ることができる両国の庶民の生活の一面を比較検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
春期休暇中に計画していた資料調査のための出張がコロナウイルスの影響により行えず、次年度使用額が生じた。状況が改善されたところで調査旅行を行いたい。
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