研究課題/領域番号 |
19K21632
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研究機関 | 札幌大学 |
研究代表者 |
佐藤 美希 札幌大学, 地域共創学群, 教授 (50507209)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2023-03-31
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キーワード | 翻訳研究 / トランスレーション・スタディーズ / 白話小説受容 / 翻訳 / 翻案 |
研究実績の概要 |
2021年度は、主に近世前半における翻訳文学として中国白話小説の受容を翻訳研究(トランスレーション・スタディーズ)の視点から考察した。白話小説受容の一つの形態であるいわゆる「通俗軍談」の作品群が、時代と共に原文に忠実な内容から次第に翻案的なあり方に変化したことは先行研究で既に明らかにされているが、その様相を翻訳研究の理論である多元システム論を用いて、仮名草子や浮世草子、軍記物語などとの力関係が大きく影響したことを明らかにした(論文「多元システム理論による近世初期白話小説受容の検討」『通訳翻訳研究への招待』第23号、2021、47-69. 単著)。 また、本研究課題を通じて、近世の外国文学受容を「翻訳」「翻案」という用語を用いて議論する上での問題点を認識した。この二つの用語は近世においては用いられていない概念であり、現代の概念では当時の外国文学受容を論じるには不十分であることと、さらにこの二つの用語を定義し直す必要性と可能性について、近世の白話文学受容を一例に翻訳研究の概念に基づいて論じた(学会発表"Reconceptualising ‘Translation’ / ‘Rewriting’: examples from the early modern Japan." 7th International Association for Translation and Intercultural Studies Conference, 14-17 September 2021, Universitat Pompeu Fabra, Barcelona, Spain, on site and on line、論文「文学作品の「翻案」と「翻訳」を再考する」『文化と言語』第85号/札幌大学研究紀要 学系統合号第1号』、2021、71-96. 単著)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍の影響で学会の中止や大学の遠隔授業対応などのため研究が遅れていたが、1年間の延長が認められたため、現在は当初予定していた最終年度の予定に近づけることができている。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は、これまでの研究を継続して、近世後半の読本受容の様相を翻訳研究の観点から読み解くことと、近世のいわゆる「翻訳・翻案」のあり方と明治前半の戯作者による西洋文学翻訳(特に明治初期は大胆な翻案=豪傑訳が主流だった)との連続性または非連続性を考察志、研究の総括をする予定である。現在は近世後半に関する論文の執筆準備中である。また7月に国際学会での発表も採択されており(発表題目‘“Translation” and “adaptation” in the Edo and Meiji Japan’. The 4th East Asian Translation Studies Conference, 30 June-2 July, 2022, Universite; Paris Cite)、そこでのフィードバックを得て、次の論文の執筆につなげる。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響で参加予定学会の中止、大学の遠隔授業対応のために十分な研究時間を割けなかったという理由により、2020年度から2021年度途中まで助成金を使用できる状況ではなかった。2022年度は1年間の研究期間延長を申請して認められたため、積極的な学会参加や実際の研究執行に関わる経費として使用することを計画している。
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