研究課題/領域番号 |
19K21635
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
有光 奈美 東洋大学, 経営学部, 教授 (00408957)
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研究分担者 |
高嶋 由布子 東京学芸大学, 国際教育センター, その他 (40792271)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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キーワード | 日本手話 / 否定 / 論理性 / 身体性 / メタファー / 空間認知 / 認知言語学 |
研究実績の概要 |
本研究では,日本手話の否定と対比の表現を分析し,手話の空間上に現れる論理性とその身体基盤を明らかにすることを目的としている。手話話者は,空間を媒体にする言語で彼らの思考を整理(概念化)しており,それが空間上で表される。音声言語の研究では概念メタファー論を通して人間の空間的思考を明らかにしてきたが,視覚=空間を媒体にする手話では,それが類像的に表現されていると考えられる。研究は,語彙・文法・談話のそれぞれの観点から否定と対比の研究を行うことにしている。 本年度は,語彙について,理解に関する類義語・反義語のネットワーク分析を行い,記述・認知言語学の概念メタファー理論からの理論的考察を行い,ドイツ・ハンブルグで開催された手話言語学で最も重要な国際学会(The 13th Theoretical Issues in Sign Language Research)でポスター発表を行い,議論した。 文法については,研究分担者がネイティブ・サイナーのグループと検討を進めているが,今年度はまとまった知見が得られていない。 談話については,否定表現を集めるため,談話の採録のパイロットスタディを行った。ある程度まとまった語用論的な知見を得るための手話の談話の撮影は,まだ発展途上であり,ネイティブ・サイナーを中心としたろう者の映像グループの意見を聞きながら,採録の手法について議論するとともに,アノテーションの作り方についても検討を進めている。 研究代表者は海外特別研究でイギリスにおり、手話研究に関する国際的な情報を収集するとともに,日本にいる研究分担者と、学会や学術集会などの機会に国内外で対面・オンラインでの研究打合せを進めることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画では,分析をするためのインタビューのほか自然談話の採録を行い,その分析をすることになっており,この採録のパイロットスタディを行うことができた。データの収集とアノテーションの作成は概ね順調に進展している。 研究代表者は手話研究をはじめたばかりだが,本年度は手話研究をリードするイギリスにて滞在研究を行い,イギリス手話の研究拠点を訪問し,またドイツで行われた手話言語学の国際会議(TISLR 13)やそのプレワークショップに参加した。国内では,12月に国立民族学博物館で行われた「手話言語と音声言語に関する民博フェスタ2019」,日本手話話者を中心としたセミナー(NPO法人手話教師センター主催 定例会「否定の類義語」 2019年10月)にも参加し,土台を固め,フィールドとの交流も深めることができた。否定の理論的研究に関しては,有光 奈美「日本語と英語における否定極性項目と緩叙法」@シンポジウム「否定と尺度と談話と―否定表現とその周辺―」 英語語法文法学会第27回研究大会、北九州市立大学(北方キャンパス) 2019年10月19日 を行い,理論的な研究を深めており,進展があった。 研究分担者は,手話のメタファーに関して,ニューメキシコ大学に短期研究滞在を行い,認知言語学の観点での手話研究の第一人者であるSherman Wilcox教授と,手話のメタファー研究の第一人者であるPhyllis Wilcox名誉教授と議論を行い,ドイツの国際会議TISLR 13での発表内容をもとに,論文の執筆を進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
現在、 the 13th Conference of Theoretical Issues in Sign Language Research (TISLR13)での研究発表内容“The semantic network based on conceptual metaphor and negation: the case of UNDERSTAND in Japanese Sign Language,”を元に、今後、国際誌に掲載される論文の執筆を準備している。 また、撮影した動画へのアノテーションと分析も進めていこうとしている。 研究代表者は日本手話についての知見を、国立障害者リハビリテーションセンターでの学習等を通して、深めようとしている。 また、英語語法文法学会第27回研究大会、北九州市立大学(北方キャンパス)「日本語と英語における否定極性項目と緩叙法」におけるシンポジウム「否定と尺度と談話と―否定表現とその周辺―」 での研究発表内容について、今後、『英語語法文法研究』 27の掲載予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者は海外特別研究でイギリスにおり、帰国時にどれだけ運べるか等を検討する必要が生じ、図書購入等を見送った。その分、2020年度に購入することを計画している。
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