研究課題/領域番号 |
19K21636
|
研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
辻 昌宏 明治大学, 経営学部, 専任教授 (00188533)
|
研究分担者 |
奥 香織 明治大学, 文学部, 専任講師 (30580427)
新谷 崇 茨城大学, 教育学部, 助教 (30755517)
仮屋 浩子 明治大学, 政治経済学部, 専任准教授 (50440136)
道家 英穂 専修大学, 文学部, 教授 (70198000)
|
研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2022-03-31
|
キーワード | 宗教改革 / 演劇 / 改宗者 / オペラ / 殉教 |
研究実績の概要 |
2020年度は研究代表者と研究分担者が対面で会うことが新型コロナ禍のため不可能になってしまったので、リモート会議の形で8月、10月、12月、3月に研究報告会を実施した。奥香織氏は、「フランスのバロック演劇と宗教ー殉教・改宗と「演じること」」と題し、特に対抗宗教改革と演劇の関係を検討し、全員で討議した。具体的にはロトルーの『真説聖ジュネ』における殉教・改宗のテーマが「演じること」と結びついており、「改宗者の二重の心性」の問題について、戯曲の形で表象・言及するという観点から興味深いものであるという点が論点となった。辻は、「教皇、枢機卿と芸術のパトロネージ」というテーマで、石鍋真澄氏の著書や佐々木なおみ氏のリモート講義を参照しつつ、教皇や教皇の甥の枢機卿が美術や音楽においてパトロンとしていかに重要であったか、教皇国家において劇場に関する政策をいかに左右したかを報告し、討議した。仮屋浩子氏は、「スペイン黄金時代演劇と宗教」のテーマで、スペイン黄金時代(16-17世紀)に活動した劇作家のうち、ほぼはっきりとユダヤ人改宗者であると判明しているゴディネス、サラテの生い立ち、作品群について調査・報告し、討議した。「古いキリスト教徒」の代表的存在であるロペ・デ・ベガとゴディネスの旧約聖書の扱い、同じくロペ・デ・ベガとサラテによる殉教者の扱いについて比較し、改宗者によるエクリチュールとロペのそれに差異があるかどうかを調査・報告し、討議した。道家英穂氏は、「順応主義と殉教劇ーアントニー・マンディと『サー・トマス・モア』」のテーマで、カトリック弾圧に加担したマンディが、カトリックの殉教者トマス・モアの芝居を書いたのはなぜかとの疑問から、作中のモアがイギリス国教会の宗教政策であるコンフォーミズムを体現するキャラクターになっているとの解釈にいたる経緯を報告し、討議した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナ禍のため、予定していたイタリア、フランス、スペイン、イギリスへの海外出張をすべて延期せざるを得ず、現地のアーカイブや図書館での調査の実行が遅延している状況である。ただし、書籍やインターネットによって調査できる範囲での研究活動および研究報告および全員による討議、および問題意識の共有、互いの専門領域に対する理解は着実に進行している。こうした状況からみて、当初の予定よりはやや遅れていると判断されるが、個別の作家、作品に関する研究は、順調に進展していると言える。そういう意味では進捗状況は、予定以上に進捗している部分と、予定が未達の部分のまだら模様であると言える。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策に関して言えば、リモート会議の形での研究報告および討議を重ねていく予定である。時期については漠然とせざるを得ないが、夏以降、欧米諸国への出張調査が可能になれば(出張調査が可能になる時期についても、一斉に可能になるのか、国ごとに異なるのかは現時点では見通せない状況である)、勤務との折り合いがついた者から出張調査に出かけ、現地での調査、研究、その報告を進める所存である。予定を進めるための最大の課題は、いつイギリスを含むヨーロッパ各国との往来が可能になるかということであり、それは現時点では日本およびヨーロッパにおける新型コロナワクチンの接種の進捗状況にかかっている部分が大きいと考えている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ禍のため、海外渡航が不可能になり、現地での研究調査が出来ず、したがって旅費や滞在費、現地で必要な諸経費が未発生になったことが最大の理由である。今年度は、海外渡航が可能になった国、地域から、実際に渡航を開始していく予定である。ただし、どの国がいつから渡航になるのかは現地点では不明な状況である。
|