研究課題/領域番号 |
19K21636
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
辻 昌宏 明治大学, 経営学部, 専任教授 (00188533)
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研究分担者 |
奥 香織 明治大学, 文学部, 専任准教授 (30580427)
新谷 崇 茨城大学, 教育学部, 助教 (30755517)
仮屋 浩子 明治大学, 政治経済学部, 専任准教授 (50440136)
道家 英穂 専修大学, 文学部, 教授 (70198000)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2023-03-31
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キーワード | 宗教改革 / 演劇 / 改宗者 / オペラ / ユダヤ教徒 |
研究実績の概要 |
2021年度も新型コロナ禍の中で、ヨーロッパへの渡航が困難であったが、代表者の辻は、2021年8月から2022年3月までフィレンツェに滞在し、インスブルック(オーストリア)、バイロイト(ドイツ)他、イタリアの各地でオペラ上演の実態調査をし、バイロイトでは市の文化担当者にフェスティバル立ち上げまでの経緯や、財政支援に関してインタビューをした。ヴェネツィアではバロック歌唱および通奏低音のマスタークラスを聴講し、バロック・オペラ上演、演奏、楽譜の様々なエディションについて講師と情報交換、意見交換をした。また、フェラーラやヴェネツィアではユダヤ博物館を訪問し、その詳細な解説により、ユダヤ教徒がレコンキスタ前後から迫害を受けたり、改宗を迫られたり、強制移住させられたりした経緯を辿った。代表者は渡欧が可能であったが、他の研究分担者は、コロナ禍での種々の制限のために渡欧しての調査が出来なかった。 コロナ禍で対面での会合が困難であり、研究報告会をリモートで6月、7月、12月、3月に実施した。新谷崇氏は、カトリック側からの宗教改革をトレント公会議を軸に考察し、改革後の国家の集権化や思想統制について、あるいは中世とは異なる圧力で迫害を受けるようになったユダヤ人等について報告し、全員で討議した。辻は、シェイクスピアの『ハムレット』について、シェイクスピアの父が隠れカトリックであった可能性および『ハムレット』の中でシェイクスピアは当時目前に迫っていたエリザベス女王の王位継承の危機について間接的な形で聴衆に訴えている可能性について報告し、討議した。奥香織氏は、ラシーヌの悲劇における宿命と見ることの関係について、ポール・ロワイヤルの思想とジャンセニスムを参照しつつ報告し討議した。道家英穂氏は、マーロウの『フォースタス博士』の前近代性と近代性について、地獄や煉獄と死生観をテーマに報告し、討議した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナ禍のため、予定していたフランス、スペイン、イギリスへの海外出張は延期せざるを得ず、その地でのアーカイブや図書館での調査を実行することはかなわなかったが、代表者によってイタリア、ドイツ、オーストリアを訪れ、劇場のアーカイブ、国立図書館などで調査・研究を進展させることが出来た。また、書籍やインターネットを利用して可能な範囲での研究活動および研究報告および全員による討議、および問題意識の共有、互いの専門領域に対する理解は着実に進みつつあり、問題意識を深めつつある。個別の作家、作品の深い読みを共有することで、代表者と分担者の問題意識が相互に照らし出され、新たな視角を得ることに貢献している。
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今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策としては、リモート会議の形での研究報告および討議を重ねていく予定である。時期については、新型コロナの感染状況やそれにともなう出入国の制限等の諸条件によるところが大きいが、夏以降、ヨーロッパ諸国への出張調査を実施していきたい。勤務との折り合いがついた者から出張調査に出かけ、現地での調査、研究、その報告および討議をすすめていく所存である。予定通りに進むかどうかは、新型コロナの変異種などの感染状況および出入国制限次第であると考えている。 研究自体の内容面に関しては、ユダヤ教徒からキリスト教徒への改宗者および偽装改宗者で演劇に深く関与したものに、エブライズモの影響がどういう形でどの程度残っているのかを検討する際の尺度・基準をどう構築していくかを検討する。そのためにヨーロッパ近代におけるエブライズム・ユダヤ教の歴史および演劇との関わりをより深く調査する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ禍により、日本からヨーロッパへの往復が著しく困難になったため、研究分担者がヨーロッパに行ってアーカイブや図書館で調査をすることが不可能になったため。 次年度には、新型コロナ感染状況が改善され、ヨーロッパへの渡航調査が相対的に容易になることが見込まれており、現地での調査・研究を実施する計画である。
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