研究課題/領域番号 |
19K21638
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
近藤 眞理子 早稲田大学, 国際学術院, 教授 (00329054)
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研究分担者 |
Detey Sylvain 早稲田大学, 国際学術院, 教授 (00548927)
小西 隆之 早稲田大学, グローバルエデュケーションセンター, 講師(任期付) (90780982)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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キーワード | 第二言語習得 / 日本語訛の英語 / 音声コミュニケーション / 音声自動評価 / 流暢さ自動評価 |
研究実績の概要 |
2019年度は、日本語話者の英語の韻律特徴を音響的に解析し、それを元に英語母語話者による語強勢の知覚と、発話リズムと流暢さの評定を中心に研究を行った。 まず69名の日本語話者が、語強勢の位置が異なる2音節、3音節、4音節の英語単語19語をキャリア文に埋め込んだものを発音したデータを使い、(1) 語強勢の有無の判断と(2) 各単語で正しい音節に強勢が置かれているか、の二点に関して、英語音声を専門とする英語母語話者四名が判定を行い、日本語話者の語強勢をほぼ正しく判断した。また、強勢が置かれた音節の位置も正しく判断された。語強勢の有無の判断に関しては、各評定者の評定値の相関(90.1-96.2%)及び、評定者間の評定値の相関(88.3-91.7%)もとても高かったが、語強勢の位置の判断に関しては、各評定者の評定値の相関(82.0-94.0%)と評定者間の相関(78.3-86.6%)の両方とも若干低かった。 次に、日本語話者65名と英語話者25名が英語の散文The North Wind and the Sun を音読したデータを用い、前回の評定者とは異なる音声の専門家である英語話評定者4名に、(a) 発話速度、(b) 発話速度の規則性、(c) 文節音間の同時調音・調音結合等の滑らかさ、(d) 発話全般の流暢さ、の評定をしてもらった。この四項目のおける四人の評定者間の評定値の相関は43-74%以上とばらつきがあったが、話速と流暢さの評定に関しては相関度が高く、ほぼ70%前後であった。音声の専門家による外国語訛の英語の流暢さの評定は信頼度が高いと言える。 この結果を基に、次年度は音声サンプル数を増やし、流暢さの機械判定の構築を行い、ひとによる評定結果との比較を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度は、日本語訛の英語の、特に韻律特性について音響的に解析し、発話速度や語強勢、語強勢が音響的にどう具現化されているかの判定と、発話速度や流暢さの人による評定を行った。また、今回の二つの評定実験では、英語学習者の音声を評定する訓練を受けた英語母語話者による判定を行ない、評定項目にもよるが評定者間の相関は70%近い高い数値となった。両実験の評定者を合わせると8名であるが、全員アメリカ英語の母語話者である。本研究の大きな目的は、母語が異なる話者間での英語コミュニケーションにおける理解度の検証であるので、今後は、母語の異なる評定者による日本語訛の英語の評定を行い、その評定値と英語母語話者の評定値との比較を行う予定である。少なくとも、英語音声の訓練を受けた英語母語話者の評定者による英語発話の評定は一致度が高く、信頼できることが伺えた。 この結果は、概ね期待していた通りで、英語音声の専門家の評定に近い評定値を目標に自動評定システムが構築できれば、かなり信頼度の高い自動評定システムとなることが解った。韻律の評定を行った後に、サンプルを増やすことができたので、新しいサンプルの評定を行い、評定値の信頼度をさらに高めたい。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、流暢さだけでなく、他の韻律項目の正確さ、文節音の正確さ、また母語話者度の人間による判定と機械による判定の比較と、判定項目の相互間の相関を検証し、また文節音の正確さと流暢さ、また文節音や他の韻律項目の正確さと発話理解度との関係を精査したい。 日本語話者の英語音声のサンプル数を増やすことができたので、英語母語話者の音声も加え、2019年度の研究を発展させて、英単語だけでなく英語の散文の音読データを用い、散文の流暢さの評定を行い、日本語話者が用いた基本周波数、シラブル長、音圧の制御による語強勢の制御法と流暢さ、また理解度との関係を検証する予定である。結果を基に、外国語訛のフランス語の流暢さ判断の先行研究である程度の成果が出ているForward-Backward Divergence Segmentation algorithm (FBDS)を用い、(1) pseudo-syllable (PS) 長、(2) pseudo-syllable (PS) rate, (3) PS rate の標準偏差、(4) 発話の割合、(5) 200ms以上のポーズの数を使っての流暢さの評定を行う予定である。これらの結果を基に、日本語訛の英語の流暢さの自動判定システムを構築する予定である。 本研究の一番の目的は、非母語話者との英語コミュニケーションを想定した日本語訛の英語の理解度であるが、これまで発話音声の評定は主に英語話者と日本語話者による評定となっている。もう少し全体の評定者の人数を増やしたいが、評定に掛かる時間や要求される知識などから負担が大きく、なかなか人数が増やせない現状がある。当初は、英語非母語話者の評定者の人数を各言語複数予定していたが、実際は各言語一名ずつとなってしまっている。今後は、言語の数を絞り、少ない言語の中で複数の評定者を確保することも考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
評定者への謝礼は、先方の大学が行っている研究に本研究の参加者が協力する形で相殺となった。また、2020年3月に予定していた、研究協力者を交えた第一回目の全体会議が、社会情勢から延期となったため、海外出張費を次年度に繰り越した。
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