研究課題/領域番号 |
19K21638
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
近藤 眞理子 早稲田大学, 国際学術院, 教授 (00329054)
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研究分担者 |
Detey Sylvain 早稲田大学, 国際学術院, 教授 (00548927)
小西 隆之 早稲田大学, グローバルエデュケーションセンター, 講師(任期付) (90780982)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2023-03-31
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キーワード | 日本語訛の英語 / 第二言語音声発話評定 / 分節音の正確さ / 人による評定 |
研究実績の概要 |
2021年度は新しい実験を行うことが難しかったため、これまで収集したデータの整理と、英語とフランス語の多様性について、文献調査を交えた研究を行った。今回言語の多様性を探った理由としては、単一の発音モデルを使った第二言語音声学習、またその概念に基づいた言語評定が難しくなっている現状がある。特に、日本語話者が不得意とする子音/l/, /r/, 有声・無声の"th"の発音、/v/の発音などや、多くの母音の発音は地域による差が大きい。特に英語の母音は、地域方言による音素体系や実際の調音による違いの差が大きいことが知られている。しかし、機械を使った自動評定を行うには、モデルとなる発音の音響特性をシステムに組み込む必要がある。しかし、実際に起きるすべての発音の情報を組み込むことは現実的でない。従って、どの程度の調音の逸脱度が音素認識に影響するのか、英語とフランス語で基本となる分節音を抽出し、調音の逸脱度と正しい音素認識の境界を見極める実験を行う準備をしている。 また、昨年度行った、日本語訛の英語発話の人による評定と機械による評定では、評定者の母語の違いによる評定に差があることが分かったが、母語の違いによる評定値に差がでなかった音声特性についても検証を行った。英語の子音の評定値のうち、母語による評定差が少なかったものとしては、無声破裂音の気息がある。破裂音の気息は、発話理解度の面では、あまり重要ではないが、母語話者度/外国語訛度の観点からは、非常に重要な英語特性である。母語の違いにかかわらず、評定者の気息の判定が一致した理由としては、第二言語としての英語音声教育において、破裂音の気息が重要な項目となっているためではないかと推測される。教える側の思い込み、刷り込みも外国語の音声評価において、重要な要素となっていると思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
コロナ禍のため、日本で対面の実験ができなかった。オンラインに切り替えて、データを集めたが、過去に行った実験は対面であったため、データと結果のすり合わせが難しくなり、2022年度に改めてどちらかの実験をやり直す必要がある。 フランスの研究協力者たちの研究環境がコロナ禍のために芳しくなく、フランス語母語話者を対象とした実験ができなかった。今年度も状況が同じようであれば、他の都市の研究機関にお願いして、実験ができるよう動く予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は昨年度予定していた知覚実験と発音の評定実験を日本とフランスを中心に行う予定である。どの国でもまだ、対面での実験が難しい状況には変りがないので、オンラインの実験を使い、また状況がよくなってきている他の国での実験も考慮する予定である。 本研究では、日本語訛の英語を、英語母語話者と、両言語とは音声特性が異なるフランス語話者にも(1)分節音の正確さ、(2)韻律の正確さ、(3)流暢さ、(4)発音の母語話者度を判定してもらい、これらの特性と機械による自動判定の結果と比較することが目的であったが、研究の究極の目的である"様々な母語の異なる話者の第二言語音声評定と自動音声評定との比較"の観点から、フランス語圏以外にも実験対象を広げることも考えている。 既に構築してある流暢さの自動判定システムに加え、分節音や韻律の正確さの自動判定システムも開始する予定である。 結果を踏まえて、自動評価システムと人による評価の比較、結果のすり合わせを行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍で実験を行うことが困難であったため。学会出張が規制され、多くの学会がオンラインでの開催になり、旅費などを使う必要がなくなったため。 また、当初予定していた、研究協力者を交えたワークショップの開催ができなくなったため、招聘にかかわる費用が未支出となっている。
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