研究課題/領域番号 |
19K21644
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
上條 信彦 弘前大学, 人文社会科学部, 准教授 (90534040)
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研究分担者 |
南 武志 近畿大学, 理工学部, 非常勤講師 (00295784)
高橋 和也 国立研究開発法人理化学研究所, 仁科加速器科学研究センター, 専任研究員 (70221356)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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キーワード | アスファルト / 縄文時代 / イオウ同位体比 |
研究実績の概要 |
①遺跡出土アスファルトの記録・観察・形状分析、各産地試料の収集、機関との調整による所蔵考古資料の集成、原油からのアスファルト生成実験 本年度は秋田県・岩手県・長野県の自治体の協力を得て、出土資料の観察、形状分析を行ったほか、試料採取を実施した。また産業技術総合研究所地質調査総合センター・東京大学総合研究博物館といった3機関の協力を得て採取した試料約30サンプルでアスファルト生成実験を行った。そのほか、漆を混合した状態での変質を知るために実験を行った。 ②各油田試料および、遺跡出土アスファルトに対する微量のイオウ同位体比分析による高精度産地推定技術の開発 地球化学では、ケロジェンから熱分解で原油が生成する場合、同位体分別が起こる。イオウ同位体比でも同じ状況が考えられ、多様な生成過程が指摘される日本列島でも有効な分析法とみられる。さらに単なる分析法の定着だけでなく、非破壊が望ましい文化財にも適用できるように0.1mgの微量かつ水溶液にできない試料でも対応できるように開発し、あらゆるサンプルの同位体比分析を可能にする。分析感度として、0.1mg程度のアスファルト試料の分析を目指した。本年度は分担者がいる理化学研究所において、同じく微量なイオウ同位体産地推定法を開発する朱の分析と合わせて、装置を改良した。その結果、まずは朱において有効な方法が開発でき、これをもとに原油にも応用可能なことが確かめられた。標本は液体・固体双方で実施し、原油からのアスファルト生成実験などから揮発成分などの変化も検討した。成果については文化財科学会で発表し、その有効性について意見交換した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定していた原油標本を収集することができたほか、出土資料についても多くの機関で分析に対する理解と協力が得られ資料観察だけでなく、試料採取ができた。実験も条件コントロールが多岐にわたるにもかかわらず、多くのデータを得ることができた。 産地推定法の開発について微量分析法の開発に成功し、今後の分析に目途がたった点が評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度に引き続き、原油サンプルの採取を各研究機関の協力を得ながら実施する。また、出土アスファルトについては新規に出土した資料を加え、既存の採集資料の分析を実施する。なお、新型コロナウィルスの影響により、現在ラボでの作業ができない状況となっているため、分析作業が遅れる可能性がある。そのため、出土資料の顕微鏡観察データなど既存の電子データの解析および昨年度まで同位体分析データの解析を中心に作業を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
分析に必要な検知管など消耗品類が既存のものを改良することによって長寿命化ができたほか、本研究目的である微量分析に成功したため、結果的にガスなど消耗品類の使用量の削減につながったことによって、消耗品類購入額が大幅に減った。また年度末の資料採集予定地が新型コロナウィルスの影響により訪問が困難になった。これらの予算は、現在新型コロナウィルスの影響により停止している装置稼働後に大量の試料分析を迅速に行うために、作業者を増員するため人件費に充てる予定である。
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