研究課題/領域番号 |
19K21645
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
佐藤 大介 東北大学, 災害科学国際研究所, 准教授 (50374872)
|
研究分担者 |
佐藤 正恵 石巻専修大学, 人間学部, 教授 (00211946)
Morris John.F 宮城学院女子大学, 学芸学部, 教授 (30220057) [辞退]
|
研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2023-03-31
|
キーワード | 歴史資料保全 / 心理社会的支援 / 学際連携 / レジリエンス / 歴史資料の救済保全 / ボランティア / 精神保健(メンタルヘルス) / 災害リスク対応の涵養 |
研究実績の概要 |
(1)歴史文化遺産を活用した東日本大震災からの復興事例についての研究と成果の国際発信:東日本大震災から10年を経過した宮城県の津波被災地や、福島県浜通りの原発事故被災地での行政と地域住民、研究者が連携して推進しているコミュニティ再生の状況について文献および実地訪問での調査を行った。これらの事例について、2021年9月21日にオンライン開催されたユネスコ「世界の記憶」部門主催の2nd Memory of the World Global Policy Forumにて口頭報告を行った。新型コロナウイルスの感染予防対策にともない、ボランティア参加者をつなぐ場としての歴史文化遺産の保全活動に大きな制約が出ていること。また被災した住民にとっては、故郷の記憶や歴史が後世に継承され、存在が忘却されない状況になることが拠り所となっていることを明らかにした。また、福島県富岡町に2021年7月に開館したアーカイブ施設では、原子力災害のみに焦点を当てるのではなく、災害後に救出された歴史資料と、住民たちの過去の記憶を記録化したものを展示することによって、地域アイデンティティを回復し、住民のつながりを再生する場としての役割を果たしている可能性について論じた。報告の趣旨は、今後の記録遺産の防災に関する国際的な取り組みに参照されることとなった。 (2)歴史文化遺産を活用した災害復興に関する成果の普及:国際機関における災害・復興支援の基調である心理社会的支援として、住民にとっての歴史資料保全活動を意義づける研究の成果について、国立文化財機構による山形県でのシンポジウムで招待講演を行った。 (3)文化財保全の初動対応マニュアルの翻訳:イタリア・ローマに本部を置くICCROMが公開している、災害・紛争で被災した文化遺産の救出に関する初動マニュアルについて、同機関との協力関係に基づき日本語版を作成した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の基礎作業である、史料レスキュー活動に参加する市民ボランティアへの聞き取り調査が、新型コロナウイルスの感染予防対策にともなう活動制限や、県外からの調査対応の自体によって行えていないため。代替策として国際発信や国際機関との連携を実施している。
|
今後の研究の推進方策 |
2022年3月時点でも感染拡大にともなう活動制限があり、新年度についても対面調査が当面実施できない可能性が高い。ボランティアは高齢者が中心であるため、公道緩和などがあっても慎重に対応すべきであるが、各地の機関に協力を得て、書面でのアンケート調査の実施可能性を探るなどして、分析可能な資料の収集を行った上で、研究を進めていく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの感染拡大にともなう活動制限のため、史料保全活動のボランティア参加者に対する聞き取り調査が実施できなかった。また、想定していた国外での学会発表のための参加旅費についても、出国制限によって執行できなかった。新年度については遅延してしている市民ボランティアを対象とした意識調査や、学会発表のための必要経費として充当する予定だが、新型コロナウイルスによる制限がなお継続していることから、状況に応じて再検討する。
|