研究課題/領域番号 |
19K21650
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
横山 操 京都大学, 農学研究科, 研究員 (20437271)
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研究分担者 |
坂本 稔 国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 教授 (60270401)
成瀬 正和 東北芸術工科大学, 芸術学部, 客員教授 (90778630)
仲村 匡司 京都大学, 農学研究科, 教授 (10227936)
澤田 豊 京都大学, 農学研究科, 助教 (80226076)
村上 由美子 京都大学, 総合博物館, 准教授 (50572749)
泉 拓良 弘前大学, 人文社会科学部, 客員研究員 (30108964)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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キーワード | エジプト遺跡出土 / コプト織物 / 博物館資料 / 非破壊分析 |
研究実績の概要 |
1)京都大学総合博物館コプト織物の未報告断片の確認(保存収納状況):博物館の公表された資料群に加え、本研究課題を通じて新たに判明した資料群がある。現状のあらましを纏めておく必要があるが、論文や成果刊行物に全ての研究データを網羅的に掲載することは難しく、また、今後の再調査・再分析が不可能なN=1のデータであることを踏まえ、京都大学の研究データ・リポジトリ(紅)への登録準備に着手した。次年度は、アーキビスト、ライブラリアンの協力を得つつ、研究データへのDOI登録実験プロジェクトのひとつとして、本格的に始動する。 2)京都大学総合博物館エジプト遺跡出土ミイラ布(剥落糸片)のラマン分光分析・放射光分析、3)京都大学総合博物館エジプト遺跡出土織物装飾ビーズのX線分析(剥落ビーズ・非破壊)、4)京都大学総合博物館エジプト遺跡出土木棺の白色赤色顔料の分光分析:これらの研究成果については、日本文化財科学会(7月、別府大学)はじめ国際会議(ICOMーCC、北京)での成果報告を予定していたが、この度のコロナ禍の影響により、学術集会はいずれも、延期(詳細未定)および中止となった。次年度以降の報告機会を検討すると同時に、論文投稿の準備を行っている。また、海外博物館での資料調査をともに行う予定であった海外在住の研究者らとは、当面メールでのディスカッションを継続する。 5)女子美術大学博物館 コプト織物の視察:日本国内には、学術的コレクションまた好事家によるコレクションを含め多数のコプト織物コレクションが存在する。中でも女子美術大学におけるコレクションは極めて貴重である。女子美術大学博物館の担当者ら、メトロポリタン名誉館員・梶谷宣子氏はじめ本研究課題の研究分担者らとともに、コレクション知見を共有し、今後の共同調査について議論を行った。 6)応用事例:コプト織物における研究手法を、日本の染織品調査に適用した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究では、世界各地に独立して存在するデータベースが、各々の研究背景を異にするため、統一的な理解をする上での隔たりをブリッジングする共通モデルの探索を目指している。 博物館資料の保存管理の上でも、安定的に持続可能な平和な状況が望ましい。しかし近年、緊張関係にある国際状況や、地震台風など自然災害を鑑みたリスクマネージメント上においても、資料そのものの保持に加えて、資料情報(二次資料)のデータベース化と、相互にブリッジングさせることの重要性は、極めて高くなっている。特に、昨今のコロナ禍により、海外との往来は困難となり、博物館収蔵資料へのアクセスが禁忌となっており、資料データベースとブリッジングは一層重要である。 その中で、今年度は、ラマン分光、Spring8での放射光分析など、最先端技術を用いた科学分析に加え、博物館資料コレクション担当者らとの情報共有を行うことにより、京都大学総合博物館エジプト遺跡出土資料(主にコプト織物)に関するデータベース作成基盤と、包括的データ管理と公開について、データリポジトリの手段を得ることができ、初年度としての取り組みは当初の予定以上の進捗であったと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題では、本来は、海外の主要な博物館コレクション資料に直接アクセスし、共同調査を行うと共に、相互のデータベースをベースとして、それぞれ得意とする研究手法でのアプローチについて情報交換を行うことを主眼としていた。しかしながら、この度のコロナ禍により、相互の往来について予定を立てることは難しく、また、それぞれの博物館においても、その収蔵資料を用いた調査については当面は禁忌とされる(ICOM)。 そのため、今後の本研究の推進方策としては、海外の研究者らとの情報交換はOnline上で行うと共に、資料について得られた分析結果を統一的に京都大学における公開リポジトリへ登録し、多言語カタログ刊行を行う。このことにより、コロナ禍終焉後の、世界各地の博物館における資料研究の礎を築きたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年末からのコロナ禍により、海外博物館における資料調査を目的とする海外渡航が困難となった。また、国内においても、資料調査および研究打ち合わせに伴う出張の全てを見合わせたことによる。
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