研究課題/領域番号 |
19K21657
|
研究機関 | 東北芸術工科大学 |
研究代表者 |
青野 友哉 東北芸術工科大学, 芸術学部, 准教授 (60620896)
|
研究分担者 |
吉村 和久 九州大学, アイソトープ統合安全管理センター(伊都地区), 学術共同研究員 (80112291)
米田 穣 東京大学, 総合研究博物館, 教授 (30280712)
澤田 純明 新潟医療福祉大学, リハビリテーション学部, 准教授 (10374943)
|
研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2023-03-31
|
キーワード | 歯牙フッ素分析 / 湧水 / 水素・酸素同位体比 |
研究実績の概要 |
本研究は、出土人骨から採取した歯のエナメル質に含まれるフッ素濃度の分析を通し、人の移動や婚姻形態といった先史社会の復元に資する新たな考古学・人類学的な分析手法の確立を目的としている。これまで北海道有珠モシリ遺跡とオヤコツ遺跡、北黄金貝塚の古人骨の歯を分析してきた。人歯のフッ素濃度が遺跡によって有意な差が認められる原因は、各地域の湧水の溶存フッ素濃度が異なるためと推定される。しかし、噴火湾東岸の湧水のフッ素濃度が0.2mg/L以下であるのに対し(例えば北黄金貝塚は0.01mg/L)、有珠湾周辺の海岸湧水のフッ素濃度が0.25から0.41mg/Lと他の地域に比べて高い点についての水質形成のメカニズムは明らかになっていない。 そこで、私たちは北海道噴火湾北東岸の湧水を採取し、水素・酸素同位体比を分析することで地下水及び井戸水が降水として供給された際の平均標高を推定することとした。2021年度は13地点で採水を行い、水素・酸素同位体比及び主要溶存成分濃度を測定した(累計22地点)。結果は、有珠湾の遺跡付近にフッ素濃度の高い湧水(海岸湧水)が存在するが、有珠善光寺下の海岸湧水のフッ素濃度は低かった。また、海岸湧水の平均涵養標高差が400 mであり、有珠山南側斜面の集水域の平均標高として妥当であることがわかった。平均涵養標高差が大きいほど水の滞留時間が長くなり、それがフッ素濃度が高くなった原因だと考えられた。 なお、有珠湾周辺で生活した古代人は海岸湧水を利用した可能性が高く、そのフッ素濃度は淡水(フッ素濃度0.3~0.4 mg/L))に海水(フッ素濃度:1.3 mg/L)が混合したものであり、淡水の濃度よりフッ素濃度は高かったことが考えられた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナ感染症の拡大により、予定していた愛知県内での分析用試料(湧水)の採取ができなかったことから、進捗状況はやや遅れている。
|
今後の研究の推進方策 |
昨年度実施できなかった愛知県内の自然湧水を採取し、フッ素濃度の地域的な差異を明らかにする。その後、既に分析済みの人歯のフッ素濃度との比較を行い、人の移動と婚姻関係について考古学的な解釈を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染症の拡大により、当初予定していた愛知県内の試料採取調査が実施できず、旅費と人件費が使用されなかった。2022年度は試料採取調査を再開することで研究の遅れを取り戻す予定である。
|