研究課題/領域番号 |
19K21659
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
加藤 知道 北海道大学, 農学研究院, 准教授 (60392958)
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研究分担者 |
増冨 祐司 茨城大学, 農学部, 准教授 (90442699)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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キーワード | 稲刈帳 / 水稲生育モデル / 復元気候データ / パラメータ最適化 |
研究実績の概要 |
昨年度デジタル化した稲刈帳からの玄米重量を解析したところ、収量の長期トレンドは、ほとんどの場所にて上昇を示していた。一方で、微小変化成分は特に天保の大飢饉とされる期間(1832-1839年)において、東日本の地点では大きく負の値を取っていた。さらに、古くにデータが存在している山形・山梨では天明の大飢饉があったとされる期間(1783-1786年)においても、収量が大きく低下する年が見られた。しかし、主に西日本で被害があったとされる享保年間には、山形のデータしか残っていなかったために、明瞭は収量の低下は見られなかった。 復元気候データ(樹木年輪より復元した夏季気温データとエルニーニョ・南方振動指数)との水稲収量の変動成分は、すべての地点で相関を示さなかった(相関係数が全ての地点と復元気候データの間で0.01以下)。これは水稲収量が地形などによる微気象変動から影響を受けているが、対比に利用した年輪解析の気候データは、多数の観測データを平均しているために、微気象を反映できていないことから来ていると思われる。また、エルニーニョ・南方振動指数は、北米の年輪データを元にしていることや、エルニーニョ現象よりもPDOなどのより日本付近の気候モードに支配されていることを示唆している。 水稲生育モデルMATCRO-Riceを利用するための、入力気候データを米国大気海洋局20世紀再解析データ(NOAA-CIRES-20CRV3, T254, 512x256グリッド, 3時間ステップ, 1806-2015年)より準備を進めた。空間解像度を0.5°x0.5°(720x360グリッド)に、時間ステップを1日に変更した。長期ランの実行時間を削減するために、モデルの動作時間ステップをオリジナルの3時間から1日へプログラム改変している。またオリジナルモデルによって、茨城県を対象にしたテストランを行なった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
稲刈帳デジタルデータと、年輪からの気温データおよび気候指数との関係を調べることができた。またモデルについて、入力気候データの加工がスタートし、最終年度に予定されているモデルによる気候変動推定への準備が揃った。
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今後の研究の推進方策 |
稲刈帳データの解析については、使用している年輪からの復元気温データに対象地環境についての代表性が乏しいと思われるために、方向性を変更し複数地点間の同時性や明治以降の県別収量についての統計資料との比較を行う。 水稲生育モデルMATCRO-Riceのパラメータ最適化については、気温感受性・窒素肥料応答性・炭水化物転流に関するいくつかのパラメータを、シンプレックス法等で実測データに合わせて調整する。また面的な分布シミュレーションについては、水田面積マップを作成する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ対応で学会等の集会がキャンセルになったことや、打ち合わせのための旅費が余った。次年度は、繰越し額を、研究補助員を増やすことや、英文校閲等に利用する予定である。
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