研究課題
代表者と分担者は,平成30年西日本豪雨による斜面崩壊の発生域を地図化する研究を行い,そのなかで,すべての谷が崩壊せず,選択的に崩壊していることに気付いた。崩壊しなかった谷は,1945年枕崎台風による斜面崩壊の発生場所に一致し,斜面崩壊は歴史的に相補的な分布の関係にある可能性があることが解った。それらを踏まえ,斜面災害が高頻度で発生してきた広島県を対象に,最新の情報技術を取り入れて,歴史的事実を踏まえた斜面崩壊発生予測について検討しようとしている。2019年度は,平成30年西日本豪雨による斜面崩壊の発生域について,広島県南部をすべて地図化することができた。その成果としての地図や地理データは,公益社団法人日本地理学会のWebを通して公開した。11月には,代表者と分担者をオーガナイザーとして,地理科学学会の秋季学術大会において,「平成30年7月豪雨災害から学ぶ―西日本各地の調査報告と防災教育への手がかり―」と題するシンポジウムを開催し,西日本各地から災害の状況や背景,防災教育に向けた災害の記録や備えについての報告と情報の共有を行い,今後の方向性について議論を行った。本研究の成果としては,斜面崩壊の発生域の地理的・地形的特徴や,斜面崩壊の発生域での建物建設の歴史的変遷,枕崎台風での土砂災害の復元などについて報告を行い,その後,論文としてまとめ,学術誌に投稿した。その後,2018年以前に,この地域で発生した1945年,1967年,1999年の土砂災害について検討するにあたり,必要な写真アーカイブスの特定を行い,一部で地図化を進め,重点的に研究を行う対象地域を検討した。なお,東広島市を対象に斜面崩壊が発生した場所の被災直後の写真を収拾し,その位置を特定した地図を作成した。今後,土砂災害の歴史を検討するのに資する資料となると考えている。
2: おおむね順調に進展している
平成30年西日本豪雨による斜面崩壊の発生域の地図を完成させた。また,広島県で発生した1945年、1967年、1999年などの斜面災害発生場所をおおむね特定した。これにより,歴史的な画像アーカイブの取得が可能となった。SfM-MVSが作動可能な環境を整え,研究を補助するものも操作技術を会得し,本格的なオルソ写真作成の準備が整った。
広島県で発生した1945年、1967年、1999年の斜面災害発生時の分布図を作成する。また,判読可能な高解像度画像アーカイブを収集する。さらに,これらの画像をもとに、SfM-MVSソフトウエアを用いて地形モデルを生成し、災害後の各年代の地形図、正射写真について,学生に補助してもらいながら作成する。崩壊発生領域を認識して、正射画像に詳細に記して各災害の崩壊分布図を作成する予定である。
SfM-MVSを作動させるのに最適な高性能なPCの選定および,発売,購入が年度内で行えなかったこと,また,高解像度空中写真の購入対象地域は選定できたものの,購入までできず,次年度使用額が生じた。2020年度にPCおよび空中写真の購入を進める予定である。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (7件)
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https://doi.org/10.20965/jdr.2019.p0894
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