研究課題/領域番号 |
19K21669
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
國弘 暁子 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (20434392)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2024-03-31
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キーワード | クィア / 同性婚 / キリスト教 |
研究実績の概要 |
クィア人類学と称する研究が増えているが、依然として、クィアの定義がゲイ・レズビアン・スタディースの継承であることを示すに留まっていることが問題視される。その原因は、クィアな姿勢が人類学的な研究姿勢と共通している点、つまり、常識にとらわれずに、不断に穿った見方をする姿勢を共有するにもかかわらず、その点が看過されているのではと問われている。本研究では、クィア理論と人類学との不可思議な共存関係を解消させて、人類学の「クイア」な研究姿勢を通じて、ゲイ・レズビアン、そしてクィア・スタディーズを人類学的に「クイア」に化していく道筋を具体的に提示し、「クイア人類学」の新たな方向づけを実証することを目指している。 具体的な作業としては、同性間の婚姻も認める民事婚 “Le Marriage Pour Tous” が2013年にスタートしたフランスにおいて、ホモフォビアを婉曲的に正当化するカトリック教会側にアプローチを行う。カトリックの教会ではいまだ同性間の婚姻に対する祝福を拒み続けているが、その理由は如何なるものか、さらに、ホモフォビアの側から生成されるゲイ・レズビアン、あるいはLGBTQの壁は如何なるものなのかを明らかにする。カトリック教会の活動に関しての現地調査は、フランス第二の都市リヨン市内で実施している。教会に所属する神父や、修道院の修道女が主導するキリスト教についての学びの中で、ジェンダーやセクシュアリティの問題がどのように語られ、解釈されるのか、さらに、ジェンダー、セクシュアリティにまつわる今日的なグローバル・コモンセンスとは、どのような齟齬を生じているのかを詳細に分析する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度10月より、フランス、リヨン市内での現地調査を本格的に実施することができたのは大きな進展であった。とりわけ、カトリックの修道院での、聖書についての定例勉強会に、半年の間、毎回欠かさず参与し続けることによって、多くの知見を得ることができたと考える。
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今後の研究の推進方策 |
フランス、リヨンでの現地調査データの分析を進めると同時に、さらなる先行研究の収集を行い、最終年度のまとめ作業を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍による渡航中止期間が長らく続いていたが、2022年度後期になってようやく再始動することができた。そのため、計画がだいぶ後にずれ込んでしまい、次年度使用額も生じてしまった。
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