研究課題/領域番号 |
19K21675
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
下山 憲治 一橋大学, 大学院法学研究科, 教授 (00261719)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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キーワード | 食品安全 / レギュラトリーサイエンス / リスク分析 / 法制度設計 / リスク法 |
研究実績の概要 |
本研究に関し、アスベスト等の化学物質のリスクガバナンスと責任に関する研究論文を執筆してきた。また、下記のように、講演等と共に共同研究や研究連携に関するネットワークの構築に努めた。 函館大学において「東アジアの共通食品安全基準の形成における法的課題」と題し、とりわけ、中国と韓国との食品流通を念頭に置きつつ、国際的な食品安全共通基準や各国間における協定などの形成状況を踏まえて報告した。この機会に、中国・人民大学と韓国・プサン大学の研究者との質疑や研究連携に関する意見交換等を行った。また、直接には食品安全にかかわるものではないが、機能性食品と医薬品の関係など、密接な関連性を有し、医食同源の考え方もある東アジアにおいては医薬品の安全性に関する法的研究も重要となっている。そこで、天津市南開大学にて「日本における医薬品の安全確保と近年の法改正」について報告し、同大学の研究者等と今後の研究連携などについて意見交換を行った。 中国・韓国に限らず、農業や食品安全について積極的に取り組んでいる台湾・中興大学食品健康研究センターの研究者とも今後の研究連携の推進について積極的な意見交換を行った。 また、レギュラトリーサイエンスとそれに基づく国・自治体を通じたリスク管理とその失敗による責任について研究を進めるため、ドイツにおける事例報告や理論状況について、この分野における著名な研究者を招聘し、報告と質疑を行った。この報告内容は公表予定である。 なお、2020年3月にレギュラトリーサイエンスとリスク制御・ガバナンスについて意見交換と今後の研究連携について複数のドイツ等の研究者と打ち合わせをするためにヨーロッパ(特にドイツ)出張を予定していたが、新型コロナウイルス感染蔓延等を踏まえ、中止した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度における中国および韓国、台湾の大学をはじめとする研究機関との共同研究・研究連携の組織構築や推進については、十分な成果を得たものと考えている。そして、現在の研究連携機関を核としつつ、今後、食品衛生学や薬学等の自然科学系研究者との連携拡大を図ることのできる体制ができつつある。ただ、EU法やドイツ等の各国におけるレギュラトリーサイエンスと法制度の比較研究と研究連携などについては、新型コロナウイルス感染蔓延の影響を受け、当初予定していた研究プランを延期等せざるを得ない状況となってしまい、中途段階となった。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、日本国内に限らず、東アジア諸国とヨーロッパなどを対象として、レギュラトリーサイエンスと規制制度の構築や公共機関、民間と国民等の役割分担などの法制度構築に向けた国際的な研究体制の構築と研究の道筋を考えるものである。しかし、新型コロナウイルス感染蔓延とその対策もあり、特に海外の研究機関との共同研究・研究連携の推進の仕方については、日本国内のみならず、各地域の状況を踏まえつつ、再検討を進めていく予定である。そのため、当初の予定よりも、研究プロジェクトの進捗が少し遅れる可能性がある。その場合、Web会議等を通じた意見交換や研究会の開催も選択肢の中に入れて、可能な範囲で対応していくこととしたい。 その一方で、国内については、ひとまず、Web会議などを通じた関連する分野の研究者等と研究会や意見交換をしつつ、より良い方策を検討していく予定である。 なお、この新型コロナウイルス感染蔓延対策も、科学的知見と各種政策や規制などの関係をみる上でレギュラトリー・サイエンスの重要な研究対象である。本研究プロジェクトにおいてもこの点に関する国際研究を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
出張等に関する節約分のほか、ヨーロッパへの出張予定を新型コロナウイルス蔓延により中止したため、2020年度使用額が増加した。本研究では、海外とのやり取りを想定しているが、今後の状況を見つつ、海外研究者等とも意見交換をしながら、適切な執行を進めていく予定である。その一つとして、Web会議を含めた研究連携の在り方を考えていくこと、そのための設備整備も計画に入れておきたい。
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