本研究では、レギュラトリーサイエンスと法に関連して、アスベストや医薬品等の化学物質管理、新型コロナウイルス感染症対策とリスク・クライシス管理、食品安全に関する調査・研究を行うとともに、共同研究や研究連携に関するネットワークの維持と展開を図ることができるように取り組んだ。ドイツのほか、韓国および台湾研究者との対面による意見交換等は韓国において実施できたものの、残念ながら、中国における新型コロナウイルス感染症対策としての各種措置の影響があり、中国研究者との意見交換等を行うことができなかった。 そのような中ではあるが、2021年に開催した日台国際シンポジウム「新型コロナウイルス感染症流行期における法的対策」の成果が同名の書籍として台湾にて公刊された。また、同様に、一橋大学法学研究科と台湾・中興大学法政学院との学術交流協定に基づき、中興大学食品健康法研究センターの研究者とのオンラインにより、「日台シンポジウム 健康・環境法制」と題して国際シンポジウムを2022年8月に共同開催することができた。同シンポジウムでは、食品安全に係わる水俣病などについて、「日本における公害・環境法の展開と環境権の位置づけ」と題して報告を行うとともに、他の日本側研究者3名の参加と報告を得た。その成果は、2023年度に、台湾において中国語で出版される予定である。 一方、レギュラトリーサイエンスとそれに基づくリスク管理・危機管理に関する事例研究ないしその延長上の研究として、建設アスベスト訴訟最高裁判決を検討した論文を公表し、また、感染症対策に関し衛生行政の歴史的展開を基礎としたパンデミック対策に関する組織と手続制度を含めた危機への対応手法の在り方について、日本公法学会にて報告を行った。
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