研究課題/領域番号 |
19K21678
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研究機関 | 学習院大学 |
研究代表者 |
小塚 荘一郎 学習院大学, 法学部, 教授 (30242085)
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研究分担者 |
角田 美穂子 一橋大学, 大学院法学研究科, 教授 (10316903)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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キーワード | 宇宙産業 / 衛星リモートセンシング / データ法 / 人工知能(AI) / イノベーション(産業革新) / 技術(テクノロジー)と法 |
研究実績の概要 |
研究初年度である当年度は、問題の所在を確認することから開始し、衛星リモートセンシングビジネスに携わる実務家を招聘して、技術や事業の詳細につき説明を受けるとともに、法的な観点から問題の所在を指摘して、議論を行った。本研究の研究手法における大きな特徴は、他領域や非法律家との「対話」という点にあるが、この活動は、そうした「対話」の場として機能させることを意図したものである。なお、この活動は(一財)情報法制研究所の「衛星データ法制研究タスクフォース」の活動と合同して行い、研究会の事務局業務の一部を同研究所に委託した(無報酬)。 衛星リモートセンシング事業は、宇宙産業であると同時に、データ産業としての特徴を有している。そのため、両側面から問題を検討する必要がある。そして、データ産業は、製造業のような装置産業ではないことから、地方に基盤を展開し、地方創生に寄与することも期待されている。そうした事情を踏まえ、令和2年3月には、小塚が鳥取県内の衛星データ事業者を訪問し、宇宙産業やデータ産業が地域活性化の一環として推進されている実情を視察した。ここでも、「対話」を行ったが、非法律家というだけではなく、政策決定や法制度設計が行われる東京とは異なる社会的な環境の中で、日頃、東京で得られる情報とは大きく異なった知見を得ることができた。この訪問調査を通じて、産業の実情がようやく把握できるようになってきたと感じている。 なお、本テーマに関する問題意識を整理する意味で、研究代表者が執筆した書籍『AIの時代と法』の中に、本テーマにかかわる記述を盛り込んだ(該当箇所は96~99頁)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究グループとの間で「対話」を行う上で適切な衛星リモートセンシング産業の関係者を探すことは容易ではなく、また、関係者間の日程調整にも時間を要したため、やや遅れ気味である。とはいえ、上記のとおり、衛星リモートセンシング産業について、ようやく実情を理解することができ、法律学の側から「対話」を開始する準備が整った。とりわけ、鳥取県を訪問した際の 関係者との意見交換の中で、衛星リモートセンシングデータの収集、解析に人工知能(AI)がどのように利用されているのかについて、初めて具体的な知見を得ることができた。これにもとづいて、令和2年10月にドバイ(アラブ首長国連邦)で開催が予定されていた国際宇宙大会に、本研究のテーマに関する報告をエントリーし、アクセプトされている。 ところが、COVID-19の感染が世界的に拡大し、国際宇宙大会も、ドバイでの開催は中止されてしまった。代替的に、サイバー開催(リモート開催)が予定されているため、報告の機会は維持されているが、海外の専門家から示唆を受ける可能性は、ある程度減少することが否定できない。また、それ以外の形で海外調査等を行うことも困難になり、対応に苦慮しているところである。
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今後の研究の推進方策 |
今年度も、(一財)情報法制研究所の協力も得ながら、実務関係者との「対話」を継続したい。特に、衛星リモートセンシングデータを利用する側の、漁業者や農業者、都市計画の専門家などとの「対話」を深めていきたい。それとともに、法律学の側からいくつかの問いを投げかけて、「対話」を深めることを今年度の目標とする。上記の国際宇宙大会(サイバー開催になってしまったが)における報告は、そのための基礎となるべきものである。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究グループとの間で「対話」を行う上で適切な衛星リモートセンシング産業の関係者を探し、招聘する手続等に時間を要したため。また、研究分担者の角田が、(国研)科学技術振興機構に採択された「法制度と人工知能」のプロジェクト責任者となり、会合等の日程の調整に時間を要したことも理由の一つである。 研究の進捗に生じている遅れは、今年度に取り戻したいが、上記のとおり、COVID-19の感染拡大によって生じた国内外での移動の制限などから、前年度までとは状況が大きく変化してしまっている。困難は大きいが、対応を考えたい。
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