本研究は、公的部門とりわけ日本の中央政府における生産性測定の基礎を構築することにより、中央政府の生産性の経時比較および国際間比較を可能にすることを目的とするものである。 民間部門における生産性測定は半世紀以上の歴史を有し、その向上を目指した取組は数多くなされてきたが、公的部門に関しては長年にわたって生産性の経年変化はないものと措定されてきた。アウトプットが測定できずインプット=アウトプットと考えられてきたためである。しかし、近年、英国政府統計局(ONS)がアウトプット指標を開発し始め、学術的にもロンドン大学(LSE)のチームがいくつかのアウトプット指標に基づく研究を開始した。日本ではまだ全く取組がなされていないが本研究は日本の中央政府に関して生産性測定の基礎構築を目指した。 初年度にあたる2019年度は、分担研究者との打ち合わせ会議を頻繁に行い、また、APO(Asian Productivity Organization)の工業企画官との意見交換、総務省行政管理局幹部との意見交換会や研究会などを行って、研究の方向についての検討を進めていった。 ところが、2020年度、2021年度は新型コロナウイルスの影響により、対面での打ち合わせ会議は困難となり、WEB上での研究者間の打ち合わせを行った。各省において公表している財務書類や、フルコストに関するデータについてアルバイトを雇用して集めた。 フルコストデータに関する情報を収集するとともに、経年で比較できるものについてピックアップする作業を続けた。2022年度は引き続き刑務所や関税などいくつかのトピックに絞って研究を継続した。今後、地方政府に関する指標へ展開していく予定である。
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