令和5年度は、本課題のこれまでの研究成果をふまえて、企業間にわたってコア‐周縁技術のスピルオーバーが生じるオープンな技術プラットフォームにおいて、どのように企業の能力の形成・蓄積が進むのかについての分析を試み、成果をまとめた。 まず、これまでの成果にもとづき、対象となる主要20企業のコア‐周縁の技術の保有状況やこれらの企業内外にわたる引用に関するデータを整理して検討した。はじめに、標準必須特許データの技術仕様の番号とそのコア‐周辺技術の分類を用いて、各企業の保有する標準必須特許を技術の構成を時系列的に示した。そのうえで、企業内外にわたるコア‐周縁の技術の標準必須特許の引用関係を時系列にそって整理し、主要20社の技術の獲得(他社引用)や強化(自己引用)の傾向を確認した。その結果、幅広い分野の技術を保有する既存の有力企業は自社内外のコア‐周縁の技術を幅広く獲得し、それらの技術間にわたる密度の高い知識を蓄積してきたのに対し、そうした蓄積に乏しい新興有力企業はもっぱらコア技術に集中して技術を他社から獲得し蓄積してきたことが明らかになった。 この点について、さらに、企業の開発能力を示す、他社からの標準必須特許の被引用件数について、自他社のコア‐周縁の技術の引用件数を説明変数、企業の技術の保有量や知識の密度をコントロール変数として重回帰分析を行った。その結果、コア技術を保有しているだけでは企業の能力として十分ではなく、企業内外に分散している幅広い技術を活用するための知識を保有しつつ、技術を他社に依存せずに周辺技術を含む技術を自社で効果的に保有し活用することが、企業の能力に結びつくことが確認できた。
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