研究課題/領域番号 |
19K21694
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
太田 亘 大阪大学, 経済学研究科, 教授 (20293681)
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研究分担者 |
畠田 敬 神戸大学, 経営学研究科, 准教授 (90319898)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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キーワード | 負債比率 / 財務レバレッジ / 営業レバレッジ |
研究実績の概要 |
本研究は、企業の生産設備が資金調達にどのような影響を与えているか、を実証的に明らかにすることを目的とする。生産費用に占める固定費の割合が大きく、変動費の割合が小さい状況は、営業レバレッジ(operating leverage)が高い、といわれる。企業の過去の資金調達は、総資産に対する負債の比率である負債比率に反映され、負債比率は財務レバレッジ(financial leverage)ともよばれる。本研究の中心の仮説は、「企業は、大型設備を用意して営業レバレッジを高くするとき、売上高の変動による業績リスクの上昇が倒産の可能性を高めるため、借入を減らして財務レバレッジを低くする」であり、これを実証的に検証する。本年度は、財務データに加え法人企業統計調査データを用い、対象企業を上場企業・非上場企業に区分したうえで分析を行った。日本企業は20年以上にわたり平均的に借入を削減している一方、営業レバレッジを上昇させており、本研究の仮説と整合的な変化が観察された。この傾向は、特に上場企業において強く観察される一方、非上場企業にはそれほど強く観察されない。また、すべての産業について営業レバレッジの上昇傾向が観察されるのではなく、建設業・電気機器産業など一部産業において営業レバレッジの上昇が観察される。企業の負債比率には産業間格差のあることが知られているが、本研究はこの要因の一つが営業レバレッジであることを示しているとともに、日本企業の資金調達の変遷は産業構造の変化から影響を受けていることを示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
財務データと法人企業統計調査データを連結したデータベースを構築し、基礎的分析を進めた。分析結果は概ね仮説と整合的であり、研究の方向を大きく修正する必要はなく、本研究は予定通りに進んでいるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
基礎的成果は得られたため、本年度は最終年度として、追加の分析及び頑健性のチェックを行う。基本となる変数である営業レバレッジおよび財務レバレッジについては、複数の算出方法があるため、いずれの方法でも結果に大きな差がないかを確認するとともに、統計的手法について検討を加える。また、これまでの研究から産業間格差および産業構造の変化が重要であることがわかったため、それに焦点をあてたより詳細な分析を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度において使用データの入手に時間がかかり研究計画の一部が後ろ倒しになっていることに加え、2020年度を含めた分析を行うことでより有意義な成果が得られると判断し、それに伴って次年度に追加設備および必要データに関する支出を行うこととした。
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