研究課題/領域番号 |
19K21695
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
芹澤 成弘 大阪大学, 社会経済研究所, 教授 (90252717)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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キーワード | 統計調査 / インパクト・ファクター / Article Influence Score / 学術誌 / 研究評価 / 引用数 |
研究実績の概要 |
学術的研究生産性の代表的な指標として、重要な国際的学術誌への論文掲載数がある。しかし、このような基準は基本的に欧米中心に設定されているので、日本の研究、特に文科系の研究を評価する際には、慎重に適用すべきと主張されることがある。 そこで一昨年度から、日本の主要国立大学の経済・社会科学系の附置研究所とシンガポール国立大学経済学部の研究生産性を国際的学術誌への論文掲載数と引用数で計測しており、今年度も継続した。今年度、日本では東京大学社会科学研究所、一橋大学経済研究所、京都大学経済研究所、大阪大学社会経済研究所を、海外ではシンガポール国立大学経済学部に加えて香港大学経営経済学部を対象とした。ただし、香港大学経営経済学部所属研究者が非常に多いので、その6領域のうち4領域の研究者のみを調査対象に絞った。 シンガポール国立大学と香港大学は、Times Higher Educationの大学ランキングでは、アジアトップ(2018)の大学である。研究評価基準が基本的に欧米中心に設定されているために、日本の大学に不利になる点があるならば、日本以外のアジアの国でも同様と考えられる。そのため、両大学が、同じ評価基準でどのような研究生産性を達成しているかを調査し、日本の経済・社会科学系部局と比較した。 具体的には、AIS(Article Influence Score)をもとに作成した経済学重要学術誌リスト(TOP20、TOP50、TOP100、TO200)と、経済学との隣接分野(経営学、社会学、法学、歴史学、地域研究、統計学など)の学術誌を膨大に含む「拡張リスト」を使い、研究生産性(論文数の総数だけではなく、部局平均や中位値)を計測した。さらに、被引用数についても、同様に調査を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
拡張リストは、経済学 TOP200 に含まれている学術誌に加えて、Web of Science の SSCI (Social Sciences Citation Index) の Business (147 誌)、Business, Finance (103 誌)、Management (217 誌)、Law (148 誌)、Sociology (148 誌)、History (95 誌)、History of Social Sciences (34 誌)、Political Science (176 誌)、Industrial Relations & Labor (27 誌)、Area Studies(74 誌)、International Relations(91 誌)、Urban Studies(40 誌)、および SCI (Sciences Citation Index) の Operation Research & Management Sciences (84 誌)、Statistics & Probability (123 誌) に分類されている学術誌全てである。このような非常に多くの学術誌への日本の4部局に所属する研究者(合計100人)に加えシンガポール国立大学経済学学部の研究者(52人)と香港大学経営経済学部の4学科の研究者(107人)の論文掲載データは膨大であるが、かなりに正確に作成し、さらにその結果をディスカッション・ペーパーとしてまとめることができた。
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今後の研究の推進方策 |
一昨年度からシンガポール国立大学経済学部を調査対象に含めたが、海外の大学のデータを集めるには日本に比べて非常に多くのに労力と時間がかかることが判明した。日本の大学の研究者で同姓同名は少ないが、海外の大学では頻繁にいる。そのため、データ・ベースで検索した際に、対象研究者と同姓同名の多くの研究者の研究業績がヒットする。その中から、対象研究者の研究業績だけを絞り込む作業は、非常に手間にかかる作業である。今年度はさらに香港大学経営経済学部の調査対象に含めたが、同じ困難があり、同部局に所属する研究者が膨大であるために、1年間で正確なデータを構築することは不可能と考え、今年度は、同部局6領域のうち4領域の研究者に絞って調査した。来年度には、香港大学経営経済学部6領域全ての研究者を対象に含めた調査を行い、データを構築する計画である。 さらに将来的には、同じアジア圏で研究大学として世界的に評価が高い大学を調査対象に含めることを計画している。研究評価の国際基準は基本的に欧米中心に設定されているために、日本の大学に不利になっていると主張されることがある。もしそのような点があるならば、日本以外のアジアの国でも同様と考えられる。ところが、シンガポール国立大学経済学部や香港大学経済学部は、研究の国際評価基準で欧米の一流大学と並ぶような評価を得ている。そのような大学を調査することによって、日本の大学の国際化のための有益な情報が得られると見込まれる。
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次年度使用額が生じた理由 |
一昨年度から、日本の大学だけではなく、海外の大学を調査対象に含めている。その際、各部局の研究リストをどう作成するべきかに苦慮している。本研究では、各部局の論文数や被引用数の1人当たり(平均)と中位値を研究生産性の指標としている。そのため、もし部局の研究能力が高い研究者だけをリストに含め、研究能力が低い研究者をリストから外せば、研究生産性の指標が高くなる。このような問題を避けるためには、全ての部局の研究者リストを同じ基準で作成することが必要となる。大学研究者の雇用制度が同じである日本の大学だけを調査対象にしていた時には、同じ基準で研究者リストを作成することは、比較的容易であった。しかし、シンガポール国立大学経や香港大学の雇用制度は、日本と大きく異なっているために、同じ基準で研究者リストを作成することが非常に困難になった。 このような問題のために、シンガポール国立大学経や香港大学の研究者の雇用条件を一人ずつ調べて、リストを作成し、さらには日本の大学とこれら海外の両大学に共通する基準を設定することが必要となっている。そのような研究者の雇用条件の調査に、2020年2月にシンガポールを、同年3月に香港を訪問する計画であった。しかし、コロナ・ウィルス感染拡大のために、訪問できなくなった。2020年度に感染が収まり次第、訪問する計画である。
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